彼女の恋は終わりから始まった。 Part.3【名前変換】 (ページ45)

今日:12 hit、昨日:1 hit、合計:358,649 hit

■Story.145 ページ45

＊

＊

＊

オレンジ色の空が徐々に暗く染まっていき

ところどころに星が見え始めた。

・

久々にお父さんもお母さんも帰りが早くて

望愛はずっときゃっきゃしながら二人の周りを走り回っていて、

そんな光景を眺めながらも頭に浮かぶのは

雅紀くんに二宮が言った言葉だった。

・

「A、さっきから暗い顔してどうしたの?」

「本当だな、何か浮かない顔してるじゃないか。

あ、もしかしてテスト自信ないのか?」

・

そう言えば、二宮とテストの勝負……

してたんだよね。

あの朝も私の名前を優しく呼んでくれて

いつものように唇の端をきゅっとあげて笑ってくれて。

・

あ「ごめん……ちょっと、出かけてくる。」

・

「え、今からご飯で……」

あ「ごめん、話終わったら……すぐ帰ってくるから。」

・

コートを羽織る時間もマフラーを巻きつける時間も

あったはずなのに、

ドラマの主人公に憧れちゃってるの?

そう質問されてしまうんじゃないか、ってくらい

薄着の格好で、そのままの状態で家を出た。

・

ちゃんと、言わなくちゃ。

ちゃんと、伝えなくちゃ。

冷たい空気が喉に一気に入り込んで苦しくて、

“二宮”の文字が掘られた表札の前でしゃがみ込んだ。

・

そうすると、遠くの方からハイヒールの音が聞こえてきて

立ち上がりそちらを向けば、

会社帰りみたいで、真っ白なコートに

ベージュのマフラーを巻いた綺麗なお姉さんがいて、

私を見て、不思議そうな顔をした。

・

「もしかして、和也のお友達か何か?」

・

あ「えっ……」

「あ、その反応は……ふふ、そんな恰好じゃ

あれだろうから家の中に入って?」

・

ポケットから鍵を取り出した女性は手慣れた様子で

門を開け、ドアを開けた。

久しぶりに来た二宮の家。

階段で一歩一歩近づくたびに鼓動が早くなる。

・

部屋からもれてくる会話に耳を傾ければ

この人は二宮のお姉さんみたいで、

キラキラ光る綺麗な指先が私を手招いて

ゆっくりゆっくり足を進ませて。

・

あの茶色がちな瞳が大きく見開いて

私を出迎えた。

＊

＊

＊