Story2 ページ2
『莉犬〜』
『あ、A。どしたの？』
事故の１週間ほど前。
放課後、Aが俺の教室に来た。
違うクラスなのに、わざわざどうしたんだろう？
『今日、部活なくてさ。
久しぶりにいっしょに帰らない？』
『お、いいよ〜』
俺たちは付き合っていた。
けどお互い部活が忙しくて、いっしょにいられる時間もあまりなかった。
ちゃんと話せるのは休日だけだから、ちょっと嬉しい。
『なんかこういうの、カップルって感じー』
『うちらからしたら新鮮だよね〜』
『あ、せっかくだからアイスでも食べない？』
『おーいいじゃん！ 莉犬おごって』
『えー……』
まぁ、たまにはいいか……
コンビニでアイスを買い、近所の公園のベンチに座る。
『うわぁつめたっ。莉犬ごちそうさまぁ』
『こぼすなよー』
とかなんだかんだ言ってアイスを堪能し、2人でぼーっとしながら話す。
『最近ぜんぜんお見舞い行けてないんだけどさ。
さとみくん、どう？』
俺がAに問いかけると、少し表情が曇る。
……さとみくんは、Aの双子の弟。
小さいころはよく3人で遊んだ。
が、中学に上がったくらいで心臓の病気が見つかって。
高校2年の今も、ずっと入院している。
病院が家や学校から遠いこともあり、俺は週1回くらいしかお見舞いに行けない。
しかも最近は色々あって、1ヶ月ほど全くさとみくんに会えていなかった。
『あー…… それなんだけど。
もう移植しないと生きられないってお医者さんに言われて』
『え……？』
『今、ドナーを探してるところ。
まだまだ簡単には見つからないけどね』
力なく笑うAに、やるせない気持ちが浮かぶ。
そんなに危ない状況だったなんて。
なんで教えてくれなかったんだろう？
しかもそれ、たぶんけっこう前から分かってたよね？
この前会ったとき、めちゃくちゃ楽しそうに笑ってたよ？
大事な幼なじみを亡くすなんて、耐えられない。
『俺にできることがあったら何でもする。
さとみくんを助けたい』
『莉犬……』
『俺、あんまり役に立たないかもしれないけど。
さとみくんとAと菜乃葉さんに協力する』
『ありがとう、莉犬。
そう言ってもらえて、きっとさとみも喜ぶよ』
そう笑ったAの顔を、
俺は一生忘れない。
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ゆう(プロフ) - ずんだ属性の餅さん» こちらこそ、素敵なコメントをありがとうございます。相反するふたつの感情と悲しさが上手く表現できていたら嬉しいです。 (2022年5月29日 11時) (
レス) id: 64f761a622 (このIDを非表示/違反報告)
ずんだ属性の餅(プロフ) - 複雑に絡み合う感情、混ざって濁って黒く…その中に差す光のような、淡い優しさに胸を打たれる素敵な作品でした…！思わず涙がほろりほろり溢れてまいりました。素敵な作品をありがとうございましたm(*_ _)m (2022年5月29日 11時) (レス) id: 2a0d204488 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - 泡糖さん» Snowflakeも読んで下さってたんですね……！ そう言って頂けて本当に嬉しいです、ありがとうございます！ (2022年5月24日 23時) (レス) id: 66f029ffe3 (このIDを非表示/違反報告)
泡糖(プロフ) - いちこめ！このお話を読んだ時に「Snowflake」を思い出しました。悲しいお話も上手に書けるのがすごいです！ (2022年5月24日 22時) (レス) @page10 id: eaad00c70c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆう | 作成日時：2022年5月24日 0時
