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Story1 ページ1

ガチャ


玄関の方から音がした。


僕は作業の手を止め、ヘッドホンを外す。

作業中でも、ちゃんとこの音は聞こえるんだよね。
僕ってすごくない?


言ったら褒めてくれるかな?

………いや、それはないか。
だって今日もきっと………………



バン! ガンッ! パリン!!



……ほらね、また不機嫌みたい。
しょうがない子だなぁ。





今日も僕が、相手になってあげるよ。







リビングに行くと、スーツを着たままの彼女・Aちゃんが座りこんでいて。
近くにあるものをひたすら床に叩きつけていた。


僕は思わず頭に手を当てる。


あー……

ローテーブルに置いてあったグラスも割っちゃってるじゃん。
次からちゃんと片付けておかないとだなぁ。


涙を零しながらAちゃんが次に掴んだのは…………写真立て。
二人で撮った写真が入っている、オーダーメイドの特別なもの。


さすがにそれは、ちょっと嫌かな。
止めないと。



「ダメだよ、Aちゃん」


後ろからそっとハグして止める。

彼女は虚ろな目でこちらを振り返った。



「…………るぅとくん」

「今日はどうしたの? 何かあったの?」



Aちゃんの頭を優しくなでながら訊く。
が、彼女はうつむいたままぼそりと呟いた。



「…………るぅとくんには関係ないでしょ」

「関係あるよ。
僕だってAちゃんがずっと苦しんでるの、嫌だもん」





そしたら。
泣いてる彼女がバッとこっちを振り返り、僕の腕を振りほどいた。



「るっ、るぅとくんには関係ないって言ってるでしょ!?」



悲痛な叫んで、僕を床に押し倒し、馬乗りになる。
こうなったらもうどうしようもない。

彼女のされるがままだ。


Aちゃんはボロボロ涙を流しながら、僕を叩いて、掴んで、引っかいて。
もう情緒すらめちゃくちゃなのかもしれない。





でも僕は、別にいい。


もちろん痛いことは嫌いだけど、
君の手のひらが僕に触れてくれるんだもん。


それに僕は、Aちゃんがストレスをぶつけてくれる道具なんだよ?
つまり。
Aちゃんは僕に、心を預けてくれてるってこと。


僕たちはちゃんと “本物の恋人” ってやつなんだよね…………?





そんな僕の想いに気づくはずもないAちゃんは、また僕の腕を引っかく。
引っかきすぎて、すーっと一筋の血が流れた。



あぁ、痛い。
でも、これが彼女の “愛のかたち” なら。


喜んで受け入れる。

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ゆう(プロフ) - 泡糖さん» わわわ…… 泡糖さんだ……! 尊敬してる泡糖さんにそう言っていただけて嬉しいです! ありがとうございます! (2022年5月17日 20時) (レス) id: 868f63c1d3 (このIDを非表示/違反報告)
泡糖(プロフ) - 続きが気になる面白さでした!二ページくらい読んだら続きは別の日に読もうって思ってたのに、最後まで見てしまいました…!!ゆうさんの表現方法がお気に入りになりました!別の作品も読んでみます! (2022年5月17日 19時) (レス) @page16 id: eaad00c70c (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - おとうふさんさん» コメントありがとうございます。そうですね…… 暴力を愛だと思い込んで受け入れていたるぅとくんは狂っていなかったのでしょうか……? という作者の独り言をお納めください。 (2022年5月15日 22時) (レス) id: 868f63c1d3 (このIDを非表示/違反報告)
おとうふさん - すっごい面白かったです!最初は夢主ちゃんの方が狂ってるなぁと思ってたんですけど最終的にはるぅとくんの方が狂ってるなとおもいました。エンドはハッピーエンドでもなくバットエンドでもない、メリーバットエンドになっていたのがとてもいいなと思いました(*^^*) (2022年5月14日 22時) (レス) @page16 id: b48d62d9e1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - るかりこさん» こちらこそイベントに参加させていただき、ありがとうございます!あと2〜3話で完結なので、最後まで見ていただけたら嬉しいです! (2022年5月6日 21時) (レス) id: aa752bd893 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆう | 作者ホームページ:×  
作成日時:2022年4月23日 19時

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