冬の話 ページ17
「・・・どうしよう。」
これは、参ったな・・・と周りを見渡す。
担任に進路指導室にこい、といわれていたのだが・・・。
場所がわからない。
職員室や移動で頻繁に使うような場所は覚えられたものの、普段使わないような場所はまだ頭に入っていなかった。
「完全に迷った・・・。」
誰かに聞こうにも、他学年の人ばかりだし、先生は通らないしでできそうにない。
せめて同じクラスの人でも通ってくれればな・・・。
ため息をついて再び歩き出そうとしたところで、誰かが私の肩をたたいた。
誰だろうと振り返ると、そこにいたのは、
「探しましたよ、渡瀬さん。」
私とあまり変わらない小柄な体躯に、質のよさそうな黒髪。
「冬美君、」
軽音部の冬美旬くんだった。私を探していたとはどういうことだろうか。
「先生に頼まれたんです、たぶんどこかで迷ってるだろうから見つけて連れてきてくれって。
予想通り、迷ってたみたいですね。進路指導室はこの上ですよ。」
あぁ、なるほど。そういうことか。
先生に頼まれたとはいえ、彼の貴重な時間を私のせいで奪ってしまったのかと思うと少し心苦しい
が教えてくれて本当に助かった。
「えっと、ありがとう。ごめんね、時間使わせて。」
そういうと冬美くんは、ふっ、と笑った。
理由はよくわからないけど・・・。
「いえ、用事のついでですし大丈夫ですよ。それじゃあ、僕は先に部室に行ってますね。
渡瀬さんも用事が終わったらきてください。待ってますね。」
「うん、また後でね、冬美くん。」
そういって階段を上ろうとしたときだった。
「あの、」
「何・・・?」
「気になっていたんですが、何で僕のことだけ苗字で呼ぶんですか??」
・・・なんでだろう。なんとなくイメージで呼んでいるような気がする。
「えっと・・・特に理由はないけど、じゃあ、旬くんでいい・・・?」
聞くということは名前で呼んでも問題ないということだろう。
「いいですよ、じゃあ僕もAって呼ばせてもらいます。じゃあ、また。」
「うん。ありがとう。」
お互い逆方向を向いて目的地に向かう。
特に距離をとっていたつもりはないが、少し距離が縮まったようでうれしい。
こんな感じで、これからもみんなと距離を縮めていけたらなと思う。
・・・私も、軽音部の一人なのだから。(一応、ね。)
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絢 - 結構、更新できました!(テスト期間だけど) (2018年2月15日 16時) (レス) id: c5be074fde (このIDを非表示/違反報告)
恵 - ありがとうございます…! (2018年2月13日 21時) (レス) id: 5d8b999ccb (このIDを非表示/違反報告)
絢 - 恵さん» ありがとうございます〜今回は春名を前面に、かな・・・? (2018年2月13日 17時) (レス) id: c5be074fde (このIDを非表示/違反報告)
恵 - こんにちは!めっちゃ面白かった!!春名がやばいですまじで。隼人Pなんだけど、やっぱりハイジョはみんな神っす! (2018年2月11日 15時) (レス) id: 5d8b999ccb (このIDを非表示/違反報告)
絢 - 復活しました!これから、たまっていた分をどんどん更新していきます! (2018年1月31日 19時) (レス) id: c5be074fde (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:絢(アヤ) | 作成日時:2017年12月11日 18時