100万回生きた俺。【ヒロアカ】 (ページ26)

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ヴィランに対するヒーローの存在ページ26

後に、駆けつけた教師全員によって事態が収められた。

生徒は緑谷を除いて、教師はオールマイトと相澤先生を除いて全員無事だった。

俺の涙では治癒しきれなかった深い傷を抱えて、負傷した3人が保健室やら病院やらに運ばれる。

100万回目の人生の二日目にして、ここまで精神的に追い詰められるとは思っていなかった。

爆「A、もう立てるか？」

『あぁ、大丈夫。』

爆豪は俺の体を支えながら、皆と集合した。

きっと皆は俺に恐怖の対象を見るような視線を向けるのだろう。

この年頃のガキが、俺の残虐な行為を見ていつも通りにはいかないはずだ。

当時の高揚感などなく、むしろ悲壮感が心臓を刺した。

当時の感覚など、戻っていなかった。

ヴィランと会ったからといって、そう簡単に当時の重罪人に戻れはしなかったのだ。

皆の列に入って、俺は顔を上げられずにいた。

掠れる声を絞って、俺は言葉を発する。

『＿＿＿＿＿皆、心配かけてゴメ＿＿＿＿＿』

轟「Aが無事でよかった」

轟は、俯く俺の言葉を遮って大きな声で言った。

それからは、次々と皆の安堵の声で溢れた。

大丈夫？やら、怪我はない？やら…

つっかえていたものがなくなった気分になった。

ただ、俺が脳無にした事について触れる者はいなかった。

『ありがとう、皆。』

俺はもう、無理矢理に個性を押し込めてでも脳無にしたような個性の使わせ方をしない。

そういう意を込めて、俺は皆と目を合わせて礼を言った。

自分の個性によって、ここまで重罪人が矯正させられるとは。

呪縛って、とんでもねぇな。

爆「もう、お前にあんな個性の使わせ方はしねぇ。
だから、俺に守られてろ」

爆豪は、俺の手を握りしめた。

こんな何百万年も年下のガキが、なんてことを言うのだ。

それじゃ、まるで本当に俺みたいな老いぼれの重罪人を愛してるみたいじゃないか。

『……そうか』

そうか、しか言葉が出てこない。

爆豪は、俺が越えようとしない壁を次々に越えてくる。

若いとか、年寄りとか、そういう価値観的な感情さえも踏み倒してくる。

ズカズカと俺の何百万年もの時を抉って、けっして逃がさないように捕らえる。

この感覚は知らない。

99万の人生において、体験したことの無い感覚だ。

爆豪が怪我しそうになって無意識的に体と個性が反応したのも、俺は知らない感覚だ。

この100万回目の人生が終わる時までに、心臓が熱くなる謎の感覚の答えが出るのだろうか。