100万回生きた俺。【ヒロアカ】 (ページ13)

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最期の幕開けページ13

あっけなく倒壊したビルが、俺の目の前にのさばる。

こうして見ていると、ヴィランだった頃の感覚を思い出す。

公共の建物を破壊するなんて、悪の所業だ。

自分の個性の多様性を誇示する方法の1つとしてあるが、ヴィラン専用だ。

爆「・・・オイ、いつまで手ぇ掴んでんだよ」

爆豪は、俺の手を振り払った。いくらか怒っていて、それも爆豪自身に対して。

今の自分のレベルを悟ったような、そんな状況なのだろう。

爆豪の表情が苦渋に歪む。

『あ、ゴメン。怪我は無いか？爆豪』

爆「は？ねぇよ。クソが」

何故、“クソが”？

俺は爆豪の体を一通り見て、怪我がないことを確認した。

『そうか。よかった。』

緑谷と飯田と麗日は、倒壊したビルの裏で服についた汚れを払っていた。

隠されていた核兵器は、原型を留めていないくらい破壊されていた。

俺は一様、足下に散乱する壊れた核兵器の破片を触っておいた。

チームが、勝つために。

ｵｰﾙ「A少年！！」

オールマイトは、待機場所から俺の元へかなりのスピードで来た。

俺は若干、引いた。

俺の名前を叫び、叱責でもするかのような雰囲気だったからだ。

『…なんです？』

俺は、落ち着いてオールマイトの呼びかけに答える。

このヒーローが、嫌いだ。という意を込めて。

ｵｰﾙ「君、やりすぎだよっ！
ビルも核兵器も破壊して、どうするつもりだったんだ！？
もし本番だったら、ビルの中に居た人は皆大怪我じゃすまないんだぜ！？」

オールマイトは、かなり怒っている。

俺を葬った時の青い目を、生徒としての俺に向ける。

その叱責には、99％の心配と1％の期待が読み取れる。

俺の肩をガッシリと掴み、子供を教育するように叱るのだ。

『そうですね。すいませんでした。』

“俺は、アンタを忘れていない。アンタは、俺を忘れているかもしれないが。
いちいち倒したヴィランを覚えてなんて、いられないだろ。”

俺は、この言葉を飲み込んで素直に謝罪した。

本当は言ってやりたかったけど、当時の俺を覚えているかどうかなんて今の俺には関係の無いことであるべきだ。

99万回の人生を経験して、麻痺した生命感覚が戻ることはない。

ヴィランの俺は、もうﾀﾋんだ。今さら、当時のように…なんて都合良く世界は回らない。

誇示する個性も当時のような立場もない俺は、この100万回目の人生で何を成せばいいのだろうか。

オールマイトの青い瞳に映る自分に、漠然とした疑問を問いかける。