最期の幕開け ページ12
俺は、自分の個性に笑うしかなかった。
かつて一瞬で命を葬るような個性を手にしていた俺が、今では一瞬で何人もの命を救う個性を持っている。
俺は自動的に発動された自分の個性を目の当たりにして、気づきたくなかったことに気づいてしまった。
“もう、ヴィランには戻れない。”ということに。
俺の個性は、俺の意思と行動と感情を縛るように勝手に動く。
気が遠くなるような人生ループの果てに、随分と酷い仕打ちだ。
この個性が、まさにオールマイトが俺に言った言葉そのものだ。
誰かの怪我を見て、勝手に涙が溢れて
しかも、その涙は恋人のキスでしか止まらないときている。
自分が哀れすぎて、笑えてくる。
爆「っ…これは……お前、治癒系だったのかよ」
緑「…凄い……一瞬で、全回復なんて…」
爆豪と緑谷は、かなり驚いていた。
俺も実は、自分の個性の一人歩きには驚いている。
『えーっと…回復したところで、そろそろ決着つけようか？』
俺は一様爆豪に報告しておいた。
俺がこれからやろうとしていることは、ある意味でヒーローとしては最低な行為なのだろうから。
爆「は？いや、敵の治療までして何しようってんだよ」
信じられないという顔をして、俺を愚弄する爆豪。
緑谷に至っては、手持ちのノートに俺の個性をメモっている。
俺はその場に屈んで、コンクリート製の床を3回軽く叩いた。
『あぁ、言い忘れていたけど…あと1分後にはビルが倒壊するから。
早く避難したほうが身のためだぞ？』
俺が言った傍から、地下より振動がビルに伝わる。
緑「えっ！？今度は何をしたの！？」
緑谷は、俺の個性に食いついている。
『今のは個性じゃない。
このビル、骨組みが少しズレててな。今のでビルのズレを大きくした。
中核の部分が崩壊しているはずだ。次第に屋上まで崩れて嫌でも核が見つかる。
…飯田と麗日は危ないかもな。』
緑「っ！？、なんで…仲間まで…っ
Aくんっ、泣いてまでそんな事をする意味が理解できないよ」
緑谷は焦って、上の階の核まで走って行った。
爆豪は俺を睨み付けて、黙っていた。
あんなに俺をクソチビ呼ばわりしていたのに、切り替えの早い奴だなｗ。
俺は爆豪に手を差し伸べた。
『爆豪、崩れる前に脱出しよーか』
いつまでも俺の手を掴まないから、俺は爆豪の腕を掴んでビルの外へ脱出した。
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作者名：メチレンブルー | 作成日時：2016年9月27日 19時
