xx＿17 ページ24
真っ暗な室内で目を覚ます。
今、何時かな。
そばに転がっていたスマホの画面を開くとAM.3:42の表示。
倒れてから、結構時間が経っていたみたいだった。
もう一度眠ってしまおうかと考えていると、急に画面が切り替わる。
「まゆ………？」
映し出されたのは、まゆからの着信画面。
一瞬驚いたけれど、わたしは迷わず通話ボタンを押した。
『もしもし、A。今、大丈夫？』
まゆの言う『大丈夫？』には、二重の意味が含まれているような気がした。
時間大丈夫？っていう意味と、Aの気分は大丈夫？っていう意味。
最初にあれを見た時はあんなに動揺していたのに、今は凪のように心が静まっている。
あえて言うなら、何も思わない。
「わからない」
『ねえ、今から迎えに行く。だから、俺のところに来て………』
唐突な誘いに驚いて返事に詰まった。
続いていた会話が途切れて、部屋に静寂がおとずれる。
電話越しに、まゆが息を呑むのがわかった。
『ごめん。Aが嫌でも迎えに行くから』
いつもとは違う強引な言葉だけど、何か強い意思を感じた。
真剣なまゆに気圧されて、「………わかった」とわたしは言った。
『それじゃあ、すぐに行くから準備して待ってて』
「うん」
『また後でね』
通話画面が消えて、スマホには倒れる前に見ていたあの記事が表示される。
わたしはそれを消し去るように画面を閉じた。
わたしに見えなくなっただけで、記事が消えるわけではないけれど。
相変わらず散らばる処方箋の間を歩いて、クローゼットに向かう。
他のライバーからも連絡があったけれど、全て開かないことに決めた。
今はどんな優しい言葉でも素直に受け取れる気がしなかったから。
まゆはどうしてこんなことをしようとしているんだろう。
わからない…………。
だけど、もう行き場のないわたしにとって、まゆの誘いはただ都合がよかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 306人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：芳野 | 作成日時：2023年3月31日 23時
