▼ ページ33
.
「A嬢。今日のところは、他の方とは別の場所を用意させるが、それでいいかな」
『はい、構いません』
それは、他意のない気遣いだろう。
今日この後ご令嬢たちの元に戻ったとして、興味津々に詰め寄られるか、奇異なものを見るように遠巻きにされるか、どちらかである。
正直なところ考えたいことも多いし、そっとしておいてくれる環境があるなら是非ともそっちをとりたい。
「……。A嬢」
『はい。……では、グルッペンさん、皆さん。今日は失礼いたします』
「あぁ、ゆっくり休んでくれ」
立ち上がり一つ礼をして、ドアを開けて待っているショッピさんへと振り向いた。
――――……
――……
部屋を出て行こうとするその背中に、ドアが閉まる直前、呼びかける。
「A嬢。……君は、敬愛する殿下と我々が対立するとしたら、どうする？」
彼女は立ち止まった。
横で、グルさん、と非難じみた声が上がるが、聞こえない振りをする。
視線の先、彼女はゆっくりと振り返って。そして、困ったように笑った。
「……」
――それだけだった。
A嬢はもう一度頭を下げてから、逃げるようにドアの向こうに姿を消してしまった。
「……グルさん、流石に直球過ぎんで」
トントンが重い溜め息混じりに言う。
「はっ……しかし、よく心得ているじゃないか」
そう思わないか、と仰ぎ見ると、彼は何とも言えない顔で押し黙った。
「オスマン、そっちはどうだった」
「んー……何ていうんやろ、身構えるほど変な子ではないのは確かやで。普通に良い子やと思う――けど、何となく、掴みどころない感じするな」
「あぁ、同感だ」
オスマンの意見に同調するように、グルッペンは頷き、大仰に足を組んだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 928人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
感情末期 - コメント失礼しますー!巡回いってきます!!大好きです!!いってきます! (2021年10月5日 22時) (
レス) id: c7b86b77aa (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 蓮さん» コメントありがとうございます。頑張って組み込んだコメディ部分、ウケたようで嬉しいです(笑) 応援ありがとうございます。 (2020年5月21日 2時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
蓮 - コメント失礼します！ふにんきのところ笑っいました。更新頑張ってください！応援してます！ (2020年5月21日 0時) (レス) id: a5a3967b27 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 櫻華さん» コメントありがとうございます。これからもご満足いただける作品になるよう頑張ります！このご時世なので、櫻華さんも重々ご自愛くださいね。 (2020年5月20日 22時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
櫻華(プロフ) - 初コメ失礼します！リアリティのあるお話で、とてもハマりました！お身体に気をつけて、これからも更新頑張ってください！ (2020年5月20日 16時) (レス) id: e0d01a51ce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：江之子
| 作成日時：2020年4月24日 1時
