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え、と思って見てみると、"あちら側"の男性だった。眠たそうな目でこちらを見やり、軽く会釈してくる。
なんでわざわざここに、と周りを窺えば、なるほど。これも親睦の一環なのか村側の男性が散らばるようにそこかしこの席に着いていた。
中でも実際に隣に座られたご令嬢なんかは、面白いくらいにぎょっとして固まってしまっている。
ならば挨拶くらいするべきか、と隣の男性へ視線を戻して、はたと思い直す。
『(そういや、言葉通じないんだっけ)』
この人はどうなんだろう。その一瞬の迷いを感じ取ったのか、あちらから声をかけてくれた。
「……こんばんは」
『あ……こんばんは』
手短なその挨拶は、確かに国の公用語だった。
彼は眠たそうなその瞳を僅かに細めたのみで、無表情のまま顔を正面に戻す。もしかしたら、彼なりの友好的な表情だったのかもしれない。
とにかく私はどちらかというと呆気にとられたような感じで、そのまま次に繋げることはなかった。
「お口に合うかは分かりませんが、是非お召し上がりください」
低い声が広間に響き渡る。
グルッペンさんは、胸の前で両手を合わせた。
『(……あ)』
――懐かしい。
食事の前に当たり前のようにやっていた仕草は、この世界に生まれ落ちてからは見ることがなくなった。
少なくともこの国の貴族社会では、「いただきます」がなかったのだ。
たちまち込み上げた感情を、ゆっくりと呑み下す。
彼は何かをぼそりと呟いて、やや大きめのスプーンやフォークを使って一口目を咥えこんだ。
殿下を差し置いての一口は、きっと毒味の意味もあるんだろうなぁ、と他人事みたいに考える。
大皿からよそった料理を、一国の王子が安心して食べられるように。
ふと気付けば、自分も両手を合わせていた。うわ、いつの間に。
「――……」
『……？』
今度は隣で、またもぼそりと何かが呟かれる。
おそらく「いただきます」に代わる村の挨拶なのだろうが、如何せん言葉が分からないので何を言ったのかも聞き取れなかった。
仕方なく、いただきます、と心の中だけで唱えておく。
さあて、ここからが問題だぞ、と私はぐるりと目を巡らせてみた。
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感情末期 - コメント失礼しますー!巡回いってきます!!大好きです!!いってきます! (2021年10月5日 22時) (
レス) id: c7b86b77aa (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 蓮さん» コメントありがとうございます。頑張って組み込んだコメディ部分、ウケたようで嬉しいです(笑) 応援ありがとうございます。 (2020年5月21日 2時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
蓮 - コメント失礼します！ふにんきのところ笑っいました。更新頑張ってください！応援してます！ (2020年5月21日 0時) (レス) id: a5a3967b27 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 櫻華さん» コメントありがとうございます。これからもご満足いただける作品になるよう頑張ります！このご時世なので、櫻華さんも重々ご自愛くださいね。 (2020年5月20日 22時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
櫻華(プロフ) - 初コメ失礼します！リアリティのあるお話で、とてもハマりました！お身体に気をつけて、これからも更新頑張ってください！ (2020年5月20日 16時) (レス) id: e0d01a51ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：江之子
| 作成日時：2020年4月24日 1時
