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――――……
――……
ゾムに手を引かれて林を抜けた先には、小高い丘があった。
人気のないそこにぽつんと建てられた建物は、もう随分前に主をなくしたようで。
『へぇ……こんなとこ初めて来た』
「な、ここの上、登んねん」
『え、上？』
ゾムが指差したのは、廃墟の二階――いや、そのさらに上の屋上だった。
行こ、と手を握り直して、彼はAを引っ張っていく。踏み入った中は流石に埃っぽかったが、床や階段は割としっかりしていた。
『っと……う、わぁ……！』
「ひひっ、ええやろ」
二階の窓から器用に屋上へと伝って、さらにAを引っ張り上げたゾム。
そこへ登って初めて見た景色に、Aは思わず感嘆の声を上げた。
丘のさらに上から見渡す平原は、ずっと遠くまで続いている。きっとあの先に隣の都市があるのだろう。
何か特別目を引くものがあるとか、そういうんじゃない。だけど、すごく素敵な景色だと、そう思った。
「暇なときとか、一人でよくここ来てんねん。誰かと来たの、お前が初めてやで」
『そうなの？』
「ん、二人の秘密な」
『んふ、分かった』
確かに、わざわざこんなところまで足を運ぶ人はいないだろうな、という距離くらいは歩いたはずだ。
二人の秘密、という言葉に簡単に嬉しくなってしまって、Aはにこにこと笑う。
「歩いたら腹減った。早速メシ食おうや」
『はいはい、分かった分かった』
全く、ムードも何もありゃしない。
催促しつつ、さっさと腰を下ろしてしまったゾムの隣に、持参していたリュックを下ろした。中から取り出したいくつもの弁当箱に、彼の目が輝く。
『ついさっき一緒に作ったんだから、中身知ってるでしょ』
「そんなん関係ないねん。はよはよ」
自分もあの特大おにぎりを取り出しながら、彼は至極ご満悦だ。
やがて弁当箱のフタを全て開け終えると、ゾムは唐突にAの腕を引き寄せた。
「今日はここー」
胡坐をかいた足の上に、すとんと座らされる。
『ちょ、っと……食べにくいじゃん』
「ええのー。今日はイチャイチャする日なんですー」
こういうとき、軽く言いながらも彼は絶対に譲らない。
それを知っていたAは溜息を吐いたが、しかしそれ以上の文句はなかった。
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江之子(えのこ)(プロフ) - あんりさん» コメントありがとうございます。自分でもこの設定好きです(笑) これからもよろしくお願いします！ (2020年5月15日 12時) (
レス) id: f1826b23af (このIDを非表示/違反報告)
江之子(えのこ)(プロフ) - ピヨさん» コメントありがとうございます。どちらも楽しんで頂けて私も嬉しいです。是非最後までお付き合いください！ (2020年5月15日 12時) (レス) id: f1826b23af (このIDを非表示/違反報告)
あんり - ひいぃ...好き...もう少し続くとの事なので楽しみに待ってます！ (2020年5月15日 8時) (レス) id: 4620368618 (このIDを非表示/違反報告)
ピヨ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。本作品を最初からrbロ編とzム編を全て読んだのですがどちらの物語もとても面白くて、設定も個人的にとても好みで最高でした。完結まで楽しみにしています。 (2020年5月10日 8時) (レス) id: 3ec25a42f9 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 豆腐の中の棒人間さん» コメントありがとうございます。確かに言い回しは沢山考えて練っている部分ですので、褒めて頂けると嬉しいです！実はご作品の「転生者は…」を密かに楽しませてもらってます。お互い頑張りましょう！ (2020年5月6日 0時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：江之子
| 作成日時：2020年4月20日 23時
