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『……！』
大きな紫色の光がAを捉えた。
自分を真っ直ぐ見据える魔物と、地に倒れ伏す両親と。二つを何度も見比べて、Aは一歩、後ずさる。
――逃げなきゃ。
『……っ』
振り返り様につまづきつつも、Aは出口を目指して走り出した。
無我夢中だった。後ろを振り返ることは一度としてない。
やがて洞窟を抜けたとき、魔物が追ってくる気配はなかった。
『はぁ……はぁ……』
洞窟の入り口が、まるで地獄への入り口のように見える。
戻ろうかとも思った。だがあの光景をまた見るのが怖くて、どうしても怖くて出来なかった。
――何が、起きたのか。
五歳の幼い身では、分からない。
ただ、今起こったのがどうしようもなく悪いことだったと、それだけ。
Aはふらふらとした足取りで歩き始めた。その後のことは、よく、覚えていない。
――――……
――……
意識の朦朧とした状態で門に辿り着いたAは、役人に保護された。
異常なほど衰弱している少女から、ようやっと話を聞き出し、やがて引き取りに現れたのは一人の女性だった。
「A……一体、何があったの」
彼女の名は、セシリア・フィリアス。
当時の"フィリアス"のギルドマスター。そして、双子の姉妹の母親だ。
家族ぐるみで付き合いのあったAの、尋常ではない様子に瞠目する。
事情を聴いた彼女が"ウロの洞窟"へ赴いたとき、そこには目を背けたい光景があった。
Aの両親は、当然助からなかった。
「……A。今日から、私たちの家族になりましょう」
『……うん』
次に目を覚ましたAは、その日のことを覚えていなかった。
現実は少女が受け止めるには重すぎて、きっと圧し潰されてしまう。自身を守るために、悪い記憶は奥の奥に閉じ込められた。
両親は、流行り病に侵されて亡くなった。
そう聞かされたAは、記憶を塗り替えて、年相応に悲しんだ。
一人になったAを、セシリアは正式に養子に迎え入れた。こうして彼女は双子の妹になり、A・フィリアスになった。
「……こんな形で思い出すくらいなら、もっと早く、本当のことを教えてあげれば良かった」
彼女の眠るベッドの傍らで、アリサとハンナは唇を噛んで項垂れる。
「……」
苦しそうな呼吸を繰り返すAの額には、大粒の汗が浮かんでいた。
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江之子(えのこ)(プロフ) - あんりさん» コメントありがとうございます。自分でもこの設定好きです(笑) これからもよろしくお願いします！ (2020年5月15日 12時) (
レス) id: f1826b23af (このIDを非表示/違反報告)
江之子(えのこ)(プロフ) - ピヨさん» コメントありがとうございます。どちらも楽しんで頂けて私も嬉しいです。是非最後までお付き合いください！ (2020年5月15日 12時) (レス) id: f1826b23af (このIDを非表示/違反報告)
あんり - ひいぃ...好き...もう少し続くとの事なので楽しみに待ってます！ (2020年5月15日 8時) (レス) id: 4620368618 (このIDを非表示/違反報告)
ピヨ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。本作品を最初からrbロ編とzム編を全て読んだのですがどちらの物語もとても面白くて、設定も個人的にとても好みで最高でした。完結まで楽しみにしています。 (2020年5月10日 8時) (レス) id: 3ec25a42f9 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 豆腐の中の棒人間さん» コメントありがとうございます。確かに言い回しは沢山考えて練っている部分ですので、褒めて頂けると嬉しいです！実はご作品の「転生者は…」を密かに楽しませてもらってます。お互い頑張りましょう！ (2020年5月6日 0時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：江之子
| 作成日時：2020年4月20日 23時
