52#男なら ページ10
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ギルド全員から大袈裟なくらいの心配とちょっとのお叱りを受け、すっかり元の調子を取り戻したAは、今日も今日とて店番に勤しんでいた。
客足が途絶え、魔石の品出し作業をしているときだ。
可愛らしく、ドアベルが鳴る。
『いらっしゃいま、せ――あ』
「やっほーAちゃん」
「どーも、こんにちは……」
『鬱先生に、ロボロさん。こんにちは』
少し予想外の客に目を見開き、しかしすぐに笑って返した。そういえば、鬱先生がこの店へ来るのは初めてではなかろうか。
案の定彼は店内をぐるりと見渡した後、感心したように頷いていた。
「へぇ、立派なお店やねぇ。それはそうとAちゃん、元気になったみたいやね」
『はい、おかげ様で。ご心配をおかけしました』
にへらと口を緩める鬱先生の斜め後ろ、やや縮こまるように立ち竦む小柄な彼に目をやる。
ロボロは黙ったまま忙しなく指を組むばかりで、視線はやはり見えないが、俯いているようにも思えた。
そのおかしな様子にAが首を傾げると、鬱先生がバシンと小柄な肩を叩く。
「ほらぁ、男ならしゃきっと言わんかい」
「い、って……分かった、分かっとるって……！」
『……？』
Aの前に押し出されたロボロは、ト、ト、と数歩たたらを踏んで。そして勢いよく、顔を上げた。
「Aさん！ あの！」
『は、はい』
「俺に、《空間》魔法の使い方を教えてくれませんか！！」
「うわ、うるさ」
店の棚が震えるほどの大音量が響く。一瞬顔をしかめた鬱先生は、やがてにやにやと意地の悪い笑みを浮かべた。
対してAは、目を見開いたまましばし固まって。
『えっとあの――』
「おいロボロ、大事なの忘れてんで」
「……っ、ふ、二人で！！！」
「うるさ」
『……はい、私で良ければ』
「……！ マジですか！！」
『ふふ……はい、マジです』
Aが笑って頷けば、ロボロはたちまち拳を握りしめた。
「っしゃ……！ よろしくお願いします！」
「お前素直過ぎひんか」
『もうすぐ閉めようかなって思ってたんです。今日この後でもいいですか？』
「は、はい、待ってます」
とそこで、唐突にギクシャクとしおらしくなったロボロが可笑しくて、思わず吹き出す。
にやにやと口角を歪める鬱先生と、背筋を伸ばして直立するロボロを前に、Aは店仕舞いを始めた。
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江之子(プロフ) - みかんさん» コメントありがとうございます。頑張ります！これからもお楽しみください。 (2020年7月13日 16時) (
レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 藻塩。さん» コメントありがとうございます。気に入ってもらえる展開でしたか！作者も好きです、書くときちょっと辛くなりましたが…(笑) (2020年7月13日 16時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - コメント失礼致します。とても面白く読ませて頂いています。これからも更新頑張って下さい。 (2020年7月12日 19時) (レス) id: 8cc228e6cc (このIDを非表示/違反報告)
藻塩。(プロフ) - 江之子さん» コメ失礼します、すんごく展開が好きです…！これからも無理しないように頑張ってください！ (2020年7月12日 14時) (レス) id: 7b5f2afcc4 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 菜の葉さん» コメントありがとうございます。登場人物たちに感情移入してもらえるとは、この上ない褒め言葉です…！頑張ります。 (2020年7月11日 0時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：江之子
| 作成日時：2020年4月20日 23時
