51#泣き言 ページ5
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ゆっくりと息を吸ったタイミングで、つられるように意識が浮上した。
薄目を開けるとぼんやりとした天井が見える。あまり見慣れた天井ではない。
はっきりしないまま視線を滑らせると、カーテンに遮られた陽光が隙間を縫って差していた。
どうやら夜中ではなく。おそらく目覚めたときに眩しくないように、部屋を薄暗くしているらしかった。
ひとつ、深呼吸。意識を引っ張り上げる。
『――……』
声は掠れて出なかった。全く、どれだけ寝ていたんだか。
ここはギルドの中の一室だ。どんな経緯でこうなったのかよく覚えていないが、とりあえず起きよう。
と、肘を立てようとしたら。
『……ぇ』
Aの左側、ベッドに突っ伏して眠りこけている人があった。
顔はうつ伏せで腕に隠され、一瞬、それが誰であるか分からなかった。
――というより、それが予想外過ぎる人物だったのだ。
『……ロボロさん？』
柔らかそうな黒髪には覚えがある。そこに伸ばした手は、起こそうとしたからなのか、ただ触れたかったからなのか。
とにかくAの指先がロボロの髪に触れる直前で、彼が僅かに呻いた。
『……！』
「ん……んぁ……？」
何故か悪いことをしているみたいな気分になって、Aは肩を揺らして硬直する。
ロボロは起き抜け独特に首を竦めると、布に隠された顔を上げて。中途半端な体勢のAと目が合うと動きを止めた。
ぴしり。数瞬の静止。
「っ、Aさん！？」
『は、はい……！』
「大丈夫かっ！？痛いとこは？苦しいとこは！？」
『わっ……』
ずい、と勢いよく詰め寄るロボロは、Aの肩に手を添えて捲し立てる。思っていた以上の反応に、Aは呆気に取られてぱちぱちと瞬きをした。
そしてふは、と息を吐き出して、くすり微笑む。
『……ふふ、落ち着いてください。大丈夫ですから』
「あ……！ す、すみませっ」
我に返り、慌て出すロボロ。肩に添えていた手はわたわた、意味もなく宙を彷徨っている。
対してAは、可笑しそうに笑いながら上体を起こした。
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江之子(プロフ) - みかんさん» コメントありがとうございます。頑張ります！これからもお楽しみください。 (2020年7月13日 16時) (
レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 藻塩。さん» コメントありがとうございます。気に入ってもらえる展開でしたか！作者も好きです、書くときちょっと辛くなりましたが…(笑) (2020年7月13日 16時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - コメント失礼致します。とても面白く読ませて頂いています。これからも更新頑張って下さい。 (2020年7月12日 19時) (レス) id: 8cc228e6cc (このIDを非表示/違反報告)
藻塩。(プロフ) - 江之子さん» コメ失礼します、すんごく展開が好きです…！これからも無理しないように頑張ってください！ (2020年7月12日 14時) (レス) id: 7b5f2afcc4 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 菜の葉さん» コメントありがとうございます。登場人物たちに感情移入してもらえるとは、この上ない褒め言葉です…！頑張ります。 (2020年7月11日 0時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：江之子
| 作成日時：2020年4月20日 23時
