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「……すんません、ついいつもの調子で。……引いてもーた？」
『まさか！』
Aは大きく目を見開いて、ぶんぶんと首を振った。
『私、ロボロさんが食べてるとこ見るの、なんか好きみたいです』
「……。ほんま、Aさんってそういうとこあるよなぁ」
『んふ、本心を言っただけですよ』
食事中だからということで顔を晒している彼のために、できるだけ端っこの目立たない席を選んだ。
彼は申し訳なさそうにしていたけれど、そのおかげでこの姿を独り占めできるのなら安いもんだな、という感想は胸の中だけに留めておく。
『美味しいですね』
「……そやね」
じゃあもしも、自分が作ったものをこんな風に、大口を開けて美味しそうに食べてくれたなら。
――料理の練習、しなきゃなぁ。と、密かに決意を固めたりするのである。
「なぁなぁ」
『はい？』
「そろそろ、敬語やめへんか？」
『へっ』
それまでの流れなどなく、唐突に出された話題に目をしばたたかせる。
やがて何を言われたか理解し、Aは曖昧に苦笑しつつ視線を逸らした。
「俺ら、ただの友達じゃないで。な？」
『ううー……』
頬杖をついてこちらを見据える瞳は、幾ばくか悪戯な色がある。
つい最近気付いたことだが、彼は顔の布を取っ払ったとき少し、ほんの少しだけ強気になるのだ。
『でも、もう癖になってて……それにロボロさんだって、私のことさん付けするじゃないですか』
「A」
『……っ』
「A。これでええか？」
おかしいなぁ、さっきまでは私が優勢だったのに。
にぃ、と口角が上がった顔も、あぁ格好良い――って駄目、また流されてる。
『……ロ、ボロ』
「ふふ……うん、なあに？」
『か、勘弁してください、これから善処しますから……！』
「ふ、ふははっ……ええよええよ、ゆっくりな」
両手で顔を覆ってしまったAを、ロボロはようやく許してくれたようだった。
――――……
――……
楽しくて柔らかく、優しくて幸せな時間はあっという間に過ぎていった。
橙色と藍色が、遠く地平線で混じり合い始めた時間帯、人通りの少ない道をわざと選んで歩いていく。
二人の間をゆらゆらと揺れている手は、例のごとく繋がっていた。
他愛もない話をしながら帰路につくこの時間が、こんなにも暖かいものなのかと初めて知る。
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江之子(プロフ) - みかんさん» コメントありがとうございます。頑張ります！これからもお楽しみください。 (2020年7月13日 16時) (
レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 藻塩。さん» コメントありがとうございます。気に入ってもらえる展開でしたか！作者も好きです、書くときちょっと辛くなりましたが…(笑) (2020年7月13日 16時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - コメント失礼致します。とても面白く読ませて頂いています。これからも更新頑張って下さい。 (2020年7月12日 19時) (レス) id: 8cc228e6cc (このIDを非表示/違反報告)
藻塩。(プロフ) - 江之子さん» コメ失礼します、すんごく展開が好きです…！これからも無理しないように頑張ってください！ (2020年7月12日 14時) (レス) id: 7b5f2afcc4 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 菜の葉さん» コメントありがとうございます。登場人物たちに感情移入してもらえるとは、この上ない褒め言葉です…！頑張ります。 (2020年7月11日 0時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：江之子
| 作成日時：2020年4月20日 23時
