58#一世一代の ページ30
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――先の見えない泥沼の中を、歩いてるようやわ。
最近は、ずっとそんなことを考えていた。
前に進んでいるはずなのに、行き先も、目的も分からない道を。
侯爵家の次男として生まれ、最初こそその肩書きは自分にとって誇りだった。
一足先に生まれた兄は、幼い自分から見てもひどく優秀で。その背中を純粋に追いかけた。
その兄と、同じにはなれないと悟ったとき、急速に世界が冷えた。
魔性の適性を受け継ぐ家系というのは珍しく、自分はそれに当て嵌まるはずだった。
だけどその道理から、自分は爪弾きにされた。《光》が使えない訳ではない、しかし肩書きを担えるほどの技量でもない。
中途半端な自分は、家の中でいつしか浮いていた。
「一体いつになれば、私の期待に応えてくれるんだ？」
何度聞いたか分からない。そうやって言われるとき、自分は決まって口をつぐむばかりだった。
侯爵である父は、何も根っからの皮肉者という訳ではない。彼はただ、貴族であることにどこまでも貪欲なだけ。
そのせいで、お眼鏡に適わない不出来な息子が許せなかった。それだけだ。
というのも、あの人は決して"落ちこぼれ"だとは言わなかった。
それが彼なりの情によるものなのかは、正直分からないが。そういえば言われたことないなぁと、勝手に考えているだけである。
それでもやはり居心地が良い訳がなく。自分は家を飛び出した。
どういった経緯でそうなったかは細かいところまで覚えていないが。
"あいつら"に出会って、冒険者になった。
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江之子(プロフ) - みかんさん» コメントありがとうございます。頑張ります！これからもお楽しみください。 (2020年7月13日 16時) (
レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 藻塩。さん» コメントありがとうございます。気に入ってもらえる展開でしたか！作者も好きです、書くときちょっと辛くなりましたが…(笑) (2020年7月13日 16時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - コメント失礼致します。とても面白く読ませて頂いています。これからも更新頑張って下さい。 (2020年7月12日 19時) (レス) id: 8cc228e6cc (このIDを非表示/違反報告)
藻塩。(プロフ) - 江之子さん» コメ失礼します、すんごく展開が好きです…！これからも無理しないように頑張ってください！ (2020年7月12日 14時) (レス) id: 7b5f2afcc4 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 菜の葉さん» コメントありがとうございます。登場人物たちに感情移入してもらえるとは、この上ない褒め言葉です…！頑張ります。 (2020年7月11日 0時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：江之子
| 作成日時：2020年4月20日 23時
