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『……あ、ネコだ』
草をかき分けるようにして姿を現したのは、夜の闇に溶け込むような暗い色の野良猫だった。
にゃあ、と鳴いた猫はどうやら人懐っこい性格のようで、立ち止まったAの足元へと身を寄せる。
『ふふ、可愛い』
「ほんまですね」
控えめに頭を撫でてやれば、さらに擦り寄ってきた。俺も、とロボロが手を伸ばした、そのとき。
――ンニ"ャアッ！！
「うわぁっ！」
『ロボロさん！？』
何が気に障ったのか、突然牙を剥いた猫。いわゆるネコパンチ――といえば聞こえはいいが、実際にそれを喰らったロボロはたまったものじゃない。
仰け反って尻餅をつく傍ら、小さき通り魔は茂みへと逃げていった。
『だ、大丈夫ですか……？』
「……大丈夫です」
いてて、と頬をさする彼は、恥ずかしそうに肩を竦めた。
布から覗くそこに細く赤い線が引いているのが見えて、Aは声を洩らす。
『怪我してる……』
「平気ですよ、ちょっと掠っただけやし」
『待って、絆創膏持ってます』
鞄の内ポケットから絆創膏を取り出して、ロボロに差し出す。受け取った彼は存外素直に笑って、自身の頬にそれを貼ろうと試みた。
しかし。
『あ、もうちょっと下です』
「ん……この辺、ですか？」
『あー、と……私、貼りますよ』
「え――」
絆創膏を取り返して、Aはロボロに詰め寄る。暗い夜道に二人座り込み、自然とその距離は近い。
ロボロはあたふたと動揺し始めた。
「えっ、ちょ、待、Aさ」
『んもう、大丈夫ですって。顔は見ないようにしますから。ね？』
「……。え？」
『え？』
「……ええっ！？」
え、の押し問答の末、ロボロは至極驚いて声を張り上げた。
はくはくと声にならない声を出すその様子が手に取るように分かって、Aは怪訝に眉をひそめる。
『すみません……まさか、そんな頑なに見せたくないとは』
「い、いや、ちゃうくて。なんで、顔隠しとる、って、分かって」
『はい？』
その顔に垂れる布に、それを隠す以外の何の目的があるというのだ。
さらに眉を寄せたAであったが、ふと思い立って、今まで触ろうとはしなかったそれに、触れてみた。
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江之子(プロフ) - みかんさん» コメントありがとうございます。頑張ります！これからもお楽しみください。 (2020年7月13日 16時) (
レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 藻塩。さん» コメントありがとうございます。気に入ってもらえる展開でしたか！作者も好きです、書くときちょっと辛くなりましたが…(笑) (2020年7月13日 16時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - コメント失礼致します。とても面白く読ませて頂いています。これからも更新頑張って下さい。 (2020年7月12日 19時) (レス) id: 8cc228e6cc (このIDを非表示/違反報告)
藻塩。(プロフ) - 江之子さん» コメ失礼します、すんごく展開が好きです…！これからも無理しないように頑張ってください！ (2020年7月12日 14時) (レス) id: 7b5f2afcc4 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 菜の葉さん» コメントありがとうございます。登場人物たちに感情移入してもらえるとは、この上ない褒め言葉です…！頑張ります。 (2020年7月11日 0時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：江之子
| 作成日時：2020年4月20日 23時
