66#意地 ページ49
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そんな中、王都に籍を置く冒険者ギルドに向けて、王宮より正式な討伐依頼が下された。
「類を見ない巨大な魔物の討伐」――王都から見て遠く西の方角で、突如確認された巨大生物。これを討伐しろというものだ。
すでに王宮のほうでも、特別に討伐隊が組まれているらしい。それに加担する形で、冒険者らも総出で馳せ参じよというのである。
表向き"依頼"とはいうものの、所謂これは、逆らい得ない"王命"だった。
"フィリアス"はもちろんのこと、"我々だ！"やその他中堅ギルドのみならず、末端の新興ギルドに至るまで余すことなく依頼書は届けられた。
「確実にこっちに近付いてる、ってわけね……。こんな魔物、見たことない」
「出発は？」
「うだうだしてる暇はないわ。全員の準備が整ったら、明朝にも出る――備えすぎなくらいがちょうどいいわね、正直、何が起こるか分からない」
王宮から届けられた資料を捲りつつ、アリサは珍しく緊張を孕ませて言った。
その目がなぞる情報は、これから戦地に赴く人間からすれば些か心許ない。それだけで、件の巨大生物が未曽有の脅威なのだと窺える。
「山のような巨大な体躯に三つの顔――キメラなんて、仰々しい名前ね」
事前の調査隊が持ち帰った情報から、その魔物は神話生物になぞらえて"キメラ"と名付けられた。
しかし現時点で持ち得た情報はというと、見た目と、その巨体が王都に向かってきているということだけ。
一刻も早く討伐しなければ、取り返しのつかないことになる。
魔物が突如出現した経緯も、生態も、弱点だって分からない状態で。すでにかの魔物の通り道と相成ってしまった不幸な村がひとつ、半壊に追いやられたと聞いた。
ギルドマスターであるアリサの部屋で、アリサ、ハンナ、Aは神妙な顔で眉を寄せる。
『今からでも、可能な限り良い石を用意する』
「……。えぇ、お願いするわ」
『じゃあ、一旦家に戻るね』
「……」
すっと身を引き退室しようとしたAを、しかしアリサは静かに呼び止めた。
振り返ると、彼女は真っ直ぐとこちらを見つめている。何だ、と視線で聞き返したところで、アリサの瞳に僅かに厳しさが込められていることに気付いた。
「A、あなたは駄目よ。連れて行けない」
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江之子(プロフ) - みかんさん» コメントありがとうございます。頑張ります！これからもお楽しみください。 (2020年7月13日 16時) (
レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 藻塩。さん» コメントありがとうございます。気に入ってもらえる展開でしたか！作者も好きです、書くときちょっと辛くなりましたが…(笑) (2020年7月13日 16時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - コメント失礼致します。とても面白く読ませて頂いています。これからも更新頑張って下さい。 (2020年7月12日 19時) (レス) id: 8cc228e6cc (このIDを非表示/違反報告)
藻塩。(プロフ) - 江之子さん» コメ失礼します、すんごく展開が好きです…！これからも無理しないように頑張ってください！ (2020年7月12日 14時) (レス) id: 7b5f2afcc4 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 菜の葉さん» コメントありがとうございます。登場人物たちに感情移入してもらえるとは、この上ない褒め言葉です…！頑張ります。 (2020年7月11日 0時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：江之子
| 作成日時：2020年4月20日 23時
