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不意に後頭部に回った手のひらが、彼のほうへと頭を押しやってくる。思わず目を瞑ると、ちょうどそこに軽く触れた熱があった。
『っ、ふふ、くすぐったいよ』
瞼を離れて、今度は額、それから鼻先、頬。
ちゅ、ちゅ、と触れるだけの口づけを至るところに落としていって、最後には優しく抱き寄せてくれる。
「あ、そうや。A誕生日いつ？」
『ん？ あぁ、１６日』
「何月？」
『今月』
「――え」
一息の間を置いてから、ロボロはがばりと起き上がった。
中途半端な体勢で卓上カレンダーを睨みつけて、彼は大きな声で叫ぶ。
「今月って、もう二週間もないやん！！」
『そうだね』
「もー言うてやぁ。俺が聞かんかったらスルーしとったやん」
『ごめん、自分から言うと催促してるみたいで』
「催促して欲しいの！」
『……ふふ、そっか』
何度見たって変わらないのに、再びカレンダーを睨んで難しい顔をするロボロに、Aは柔らかく頬を緩めた。
『……』
――いつも通り、できてただろうか。
ぶつぶつと思案する横顔を、ベッドに寝ころんだまま見つめる。
ねぇ、ロボロ。侯爵に向けて強く反論していた時、貴方どんな顔してた？ ドアの向こうからじゃ、見えなかったの。
「あー、何やったら喜ぶんや……。なぁ、Aは何か欲しいもんある？」
貴方は家のことでずっと苦しんでたけど、でもそれは、あの人達に認められたかったからこそなんでしょう。
何も思っていなければ、苦しくもないはずだから。でも貴方は、《光》にだってちゃんと向き合って。
「いや、やっぱ自分で考える！ ちょっと待ってや」
今の貴方なら、きっと侯爵にも認めてもらえる。
「な、なぁ。センス悪くても、貰ってくれるか……？」
『……。ロボロさん』
「ん？」
――ロボロ。
『ロボロさん』
「急に何や？ どした、具合悪いか？」
――ロボロ、ロボロ。
「……。A、何、改まって」
例えば、ひどく凪いだ静かな水面でも、ちょっとの衝撃が加わればそこから波紋は広がって、それは容易には止められない。
私は今からその水面を裂くように、尖った小石を、投げ入れるのだ。
『ロボロさん、私たち――
――――もう、離れましょう』
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江之子(プロフ) - みかんさん» コメントありがとうございます。頑張ります！これからもお楽しみください。 (2020年7月13日 16時) (
レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 藻塩。さん» コメントありがとうございます。気に入ってもらえる展開でしたか！作者も好きです、書くときちょっと辛くなりましたが…(笑) (2020年7月13日 16時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - コメント失礼致します。とても面白く読ませて頂いています。これからも更新頑張って下さい。 (2020年7月12日 19時) (レス) id: 8cc228e6cc (このIDを非表示/違反報告)
藻塩。(プロフ) - 江之子さん» コメ失礼します、すんごく展開が好きです…！これからも無理しないように頑張ってください！ (2020年7月12日 14時) (レス) id: 7b5f2afcc4 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 菜の葉さん» コメントありがとうございます。登場人物たちに感情移入してもらえるとは、この上ない褒め言葉です…！頑張ります。 (2020年7月11日 0時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：江之子
| 作成日時：2020年4月20日 23時
