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「えっ、どうすればいいの？」
『リック、持ってきた魔石を見せて』
名指しされたリックは、懐から小ぶりな巾着を取り出し、中身をAに見せた。
Aはそこから一粒を取り出すと、リックの手のひらに乗せる。
『これは《光》。リック、この一番上のツタを切ってみてごらん』
「ぼ、僕そんなのやったことないよ！」
『大丈夫。何をするのも、"初めて"は必ずあるよ。このツタを切るにはどうしたらいい？』
「……剣で、切る？」
『いいね。じゃあ、想像してみて。《光》の剣が、ツタを切るの』
「………」
「リック、頑張れ！」
「頑張って！」
仲間の声援を受けた少年は、小さな魔石を握りしめて、目の前のツタをじぃと見つめている。
やがて、リックはそれを砕いた。ガリ、という僅かな音は、魔法を発動するサイン。
――ザンッ
「ぅ、わぁっ」
魔法を放った自分が一番に驚いて、リックは数歩後ずさった。
やや弱々しい《光》の一閃だったがしかし、目標の一番上のツタは切れ、その切れ目には焦げがついている。
紛うことなき成功、Aも納得の出来だった。
「うっわ、お前やるやん！」
意外にも、初めに労ったのはロボロだった。
半ば放心していたリックの頭に、ぽんぽんと手を置いている。
「う、うんっ」
「すっげぇ！ なぁ、オレにも出来る！？」
「わたしたちもやってみたい！」
子供たちは、我先にとAに詰め寄る。
その勢いを宥めながらも、Aは一人一人に魔石を選び、順番に魔法を使わせた。ロボロのほうもコツを教えたりなど、立派に先生をしている。
順調にツタは切れ、そこに道が出来た。
小さき冒険者たちが切り開いた、最初の道だ。子供たちは皆、良い顔をしている。
『凄いよぉ。みんなが作った道だ、一人前の冒険者に一歩近づいたね』
Aが言うと、子供たちは一層目を輝かせた。
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作者名：江之子
| 作成日時：2020年3月25日 23時
