51#今度こそ ページ25
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とても心が軽かった。
竜の間を抜けた先、雲のない夜空で月が明るく輝いているのが、今の心情によく釣り合っている。
『……すっかり遅くなっちゃいましたね。付き合わせてしまってすみません』
「いえ、大丈夫です」
そんな月とは反対に、灯りの落ちた村を歩く私たちの手は、当然のように繋がれている。
こんな風に指を絡ませられて、あわあわするしかなかった日が、何だか遠い過去のようにも思えた。
「……少し、話しませんか」
立ち止まってそう言った彼が、ふい、と視線をやったのは。
『(ここ、あのときの……)』
道端の何てことない花壇は、見覚えがある。彼がここを選んだのは、果たして偶然なのか、わざとなのか。
とにもかくにも私は、異論なく手を引かれるまま、彼の隣へとそっと腰かけた。
しばらくは、沈黙が続いた。
お互いに足元を見やったり、夜空を見上げてみたり。何分くらい経ったのかは数えていなかったけれど、最初にショッピさんが口を開いた。
「……終わりましたね」
夜だから声を抑えているのか、それとも緊張しているのか。少しだけ、掠れた声だった。
『はい、終わりました』
「竜王も、覚醒しましたね」
『そうですね。……まぁ、しなかった原因も、私だったみたいですが』
苦笑してみせると、隣で彼もふっと笑う。
笑って、それからまた口をつぐんでしまった彼に、再び沈黙が続くかと思われたが。
今度は、それほど待たないうちに次の言葉が投げかけられた。
「――悩みは、なくなりましたか」
『……』
この人は、出会ってからいつもそうだ。
"大丈夫ですか"――いつも人を煽るようなことを宣うくせに、その言葉だけは会う度に聞かされて。
私に困ったことがないか。一人で抱え込んでいないか。
過剰なほどに心配して、私だけを真っ直ぐに気遣ってくれる。そうと気付けなくて、あろうことかおかしな勘違いまでしてしまって。
『実は……まだ一つだけ、困ったことが』
「え？」
驚いてこちらを見やる彼に、ぴん、と人差し指を立ててみせる。
『今回の一件で、竜王の覚醒も果たせましたし……"世話係"の仕事はほぼ終わったと思うんです』
少なくとも、グルッペンさん達村側の目的は果たせた。
殿下側は――まぁ昼間、竜たちに対してあんな風に言っていたし、私が"世話係"を続ける意味はもうないだろう。
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クロエ(プロフ) - ありがとうございます！！！！！！ (10月8日 4時) (
レス) id: 3d0234bb1d (このIDを非表示/違反報告)
クロエ(プロフ) - どうしてこの話がまだまだ伸びないのか疑問すぎる！！なんだか分厚い辞典でこの小説欲しいくらいなんか好きです！！！！！！最初の出会いからこの話の終わりまでずっとニマニマしちゃって覚醒の時なんかボロボロ泣いちゃいました！！めっちゃいい話を書いてくれて (10月8日 4時) (レス) @page33 id: 3d0234bb1d (このIDを非表示/違反報告)
妖々梅雨里(プロフ) - 最初から、最後まで。主人公の感情にこちらも身を乗り出してしまうかと思うくらい入り込めました。最後にはつい感極まって泣いてしまいました。素晴らしい作品をありがとうございます!!! (2021年12月25日 23時) (レス) id: f5b2ce54f6 (このIDを非表示/違反報告)
ななし - とても素敵な物語でした…語彙が乏しいことにここまで後悔する日が来ようとは…!!1冊の小説を読んだ気分です。本当に本当に素敵な物語をありがとうございました！！ (2021年4月6日 23時) (レス) id: 31e2beb33a (このIDを非表示/違反報告)
つ旦(プロフ) - ここ最近で一番作品の世界にのめり込んでしまいました。距離感や環境に心温まり、ストーリーを読むにつれて心満たされていく感覚が最高でした。素敵な作品を書いてくださり本当にありがとうございます。 (2021年2月1日 17時) (レス) id: 4806c4a672 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：江之子
| 作成日時：2020年6月25日 2時
