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『……。はい、本当に』
やれやれと首を振るのとは裏腹に、殿下の顔はどこか晴れやかで。
まぁ隣国をつつく名分が出来た訳だし、そこは儲けものだね。……続けてそう宣う彼は、やっぱり強かだけれど。
私たちの間を吹き抜ける風は、ひどく爽やかだった。
「ところで、話は変わるがA嬢」
『はい、殿下』
「竜王と心通わせる王妃なんて――浪漫があって素晴らしいと思わないかい？」
『……。え……？』
何を言われたのか理解する前に、空いていた方の手をとられていた。
『で、殿下……！？ ご冗談はおやめください……！』
「……うーん、割といい考えだと思うんだけどなぁ」
にっこりと笑う殿下は、私の右手をとったままだ。
彼の顔が晴れやかな一方で、左手がぎちぎちと握り潰される勢いであるのだが。
「じゃあ聞くが……この村に、"一国の王太子"よりも好い物件があるのかな？」
『え……』
普通なら、ここで頷くことは殿下への侮辱になるかもしれない。
だけどこちらを覗きこんで目を細める彼が、私が思っていたよりも情に溢れた人間だということを、もう知っている。
『――はい。……ずっと、隣に居たいと、思う人が』
「……。ふふ、そうか。それなら仕方がないね。……おっと、そろそろ君の
……男の人って、そういうクサイ台詞を言うのが好きなのかしら。
おどけたように言いながら、殿下は私の手を離した。
じゃあね、と短く言って背を向けた殿下は、そのまま待機していた護衛騎士と共に去っていく。
後に残された私たちは、何ともむず痒い空気の中にいた。
『……』
「――さっきの」
『……はい』
「俺のことじゃなかったら、ぶん殴りますけど」
『(出た！)』
しばらくぶりに聞いたそのフレーズが可笑しくて、声を上げて笑ってしまう。
やっと見上げた彼は、むっとしたように顔をしかめていた。
『ふふっ……じゃあ、殴られる予定はなさそうです』
「……！」
――あぁ、これって。
もしかして私も、クサイ台詞だっただろうか。
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クロエ(プロフ) - ありがとうございます！！！！！！ (10月8日 4時) (
レス) id: 3d0234bb1d (このIDを非表示/違反報告)
クロエ(プロフ) - どうしてこの話がまだまだ伸びないのか疑問すぎる！！なんだか分厚い辞典でこの小説欲しいくらいなんか好きです！！！！！！最初の出会いからこの話の終わりまでずっとニマニマしちゃって覚醒の時なんかボロボロ泣いちゃいました！！めっちゃいい話を書いてくれて (10月8日 4時) (レス) @page33 id: 3d0234bb1d (このIDを非表示/違反報告)
妖々梅雨里(プロフ) - 最初から、最後まで。主人公の感情にこちらも身を乗り出してしまうかと思うくらい入り込めました。最後にはつい感極まって泣いてしまいました。素晴らしい作品をありがとうございます!!! (2021年12月25日 23時) (レス) id: f5b2ce54f6 (このIDを非表示/違反報告)
ななし - とても素敵な物語でした…語彙が乏しいことにここまで後悔する日が来ようとは…!!1冊の小説を読んだ気分です。本当に本当に素敵な物語をありがとうございました！！ (2021年4月6日 23時) (レス) id: 31e2beb33a (このIDを非表示/違反報告)
つ旦(プロフ) - ここ最近で一番作品の世界にのめり込んでしまいました。距離感や環境に心温まり、ストーリーを読むにつれて心満たされていく感覚が最高でした。素敵な作品を書いてくださり本当にありがとうございます。 (2021年2月1日 17時) (レス) id: 4806c4a672 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：江之子
| 作成日時：2020年6月25日 2時
