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『や、やだ……っ』
「っ、A嬢！？ 何してるんやこんなとこで！」
誰かが、ふらりと踏み出した私を引き止めた。
それが誰であったかなんてどうでもいい。竜王は左右によろめきながら飛んできて、やっとのことで山岳の亀裂の前、私たちの目の前に降り立った。
「グ、オォォオ……！」
絡んだ鉄製の網は、流石の竜王でも自力での脱出は難しいようだ。傷だらけでもがく彼は、苦しげに唸りながら体躯をくねらせている。
「おい、助けるぞ！」
「――い、いや待て、危ねぇ！」
「大砲だ！ こっちに飛んでくる！！」
「竜王が！」
ドォン、と空気を震わせる音を追うと、空に放物線を描いて重みのある鉄の弾が飛んでいた。
『……ぁ』
それが私の目には、ひどく、ゆっくりに見えて。その放物線の最後に、竜王がいた。
「しまっ……A嬢！！」
『――――リュウジっ！！！！』
彼が目の前に降り立ってくれて良かった。だって、あの砲弾がここに着く前に、私が先に駆け寄れた。
もう傷だらけなの。だから守ってあげなくちゃいけないの。
だって、私はこいつのお姉ちゃんだから。世界が変わっても、そう思わずにはいられなかったの。
両手をいっぱいに広げたら、少しは彼を守ってあげられるだろうか。
竜王の前に立ち塞がると、鉄の弾はスローモーションで、だけど確実に目の前に迫ってきた。
「――A！！！」
『……！』
その景色が影に遮られて、身体が何かに包まれたとき。
大好きな匂いが鼻をくすぐって、一瞬で泣きそうになった。これは、知ってる。
僅かに紫煙が混じった、いつだって甘く抱き締めてくれる匂い。
『ショッピさん……！』
彼は痛いくらいに、ぎゅうと私を抱き込む。
稀有で不可思議な人生の中で、私は初めてこの瞬間、"死"を覚悟した。
グオオオオォォォォォオオオオオオオオオオッ……！！！！
――そのとき、地に響き、天を裂くような轟音が、私たちの身体を震わせた。
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クロエ(プロフ) - ありがとうございます！！！！！！ (10月8日 4時) (
レス) id: 3d0234bb1d (このIDを非表示/違反報告)
クロエ(プロフ) - どうしてこの話がまだまだ伸びないのか疑問すぎる！！なんだか分厚い辞典でこの小説欲しいくらいなんか好きです！！！！！！最初の出会いからこの話の終わりまでずっとニマニマしちゃって覚醒の時なんかボロボロ泣いちゃいました！！めっちゃいい話を書いてくれて (10月8日 4時) (レス) @page33 id: 3d0234bb1d (このIDを非表示/違反報告)
妖々梅雨里(プロフ) - 最初から、最後まで。主人公の感情にこちらも身を乗り出してしまうかと思うくらい入り込めました。最後にはつい感極まって泣いてしまいました。素晴らしい作品をありがとうございます!!! (2021年12月25日 23時) (レス) id: f5b2ce54f6 (このIDを非表示/違反報告)
ななし - とても素敵な物語でした…語彙が乏しいことにここまで後悔する日が来ようとは…!!1冊の小説を読んだ気分です。本当に本当に素敵な物語をありがとうございました！！ (2021年4月6日 23時) (レス) id: 31e2beb33a (このIDを非表示/違反報告)
つ旦(プロフ) - ここ最近で一番作品の世界にのめり込んでしまいました。距離感や環境に心温まり、ストーリーを読むにつれて心満たされていく感覚が最高でした。素敵な作品を書いてくださり本当にありがとうございます。 (2021年2月1日 17時) (レス) id: 4806c4a672 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：江之子
| 作成日時：2020年6月25日 2時
