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『……でも』
――でも、それこそどうしたらいいの。
村の誰も、彼も私も、竜王本人だってその方法が分からなくて苦しんでるのに。
「あんたは、弟離れせんとって言ったけど。……俺はちゃうと思う」
『え……？』
「竜王の覚醒には、きっとあんたが必要なんや」
『……』
確証もないことを、彼はやけに確信めいた口調で宣った。
『私に、出来るでしょうか』
――本当は、何をどうすればいいのか、今でもさっぱり見当がつかない。
「出来る出来ないじゃありません。出来るまで、俺が守ります」
だけど貴方がそう言えば、希望が見えてきたような気がするのは何故だろう。
暗く閉ざされた道の先に、僅かに光が差したように見えるのはどうしてだろう。
悩みを打ち明けた私より先に、彼のほうが早く覚悟を決めてしまった。
この人の隣に立ちたいなら、もう自分から離れるようなことは出来ない。何が起こっても、向き合わなきゃ。
その思いがどうか伝わりますように。
顔を寄せた彼の胸元から、いつもより強めに紫煙の気配がする。
『――煙草』
「え」
『吸い過ぎは、身体に良くありませんよ』
「……あー……」
その指摘は堪えたのか、ショッピさんは珍しく目を泳がせた。
じっと見つめていれば、観念したかのように項垂れた額が、私の頭に重みを与えてくる。
「俺、多分、あんたが思っとるよりずっと……あんたが居らんとグズグズやで」
『……ふ、ふふ』
先程よりもさらに近くなった声が、私の耳を甘くくすぐる。
こそばゆくて身を捩じらせたところで、私たちを乗せた竜が、グオ、と短く啼いた。
「……もうすぐです」
『……。はい』
途端、緊張感が肌をなぞる。
時間にして一時間もかかっていないだろう。直線最短距離で飛び、ようやくあの山岳地帯が見えてきた。
『……』
遠くからでも分かる不穏な空気。
噛み締めた唇の隙間から、落ち着かせるためにと深く息を吐き出した。
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クロエ(プロフ) - ありがとうございます！！！！！！ (10月8日 4時) (
レス) id: 3d0234bb1d (このIDを非表示/違反報告)
クロエ(プロフ) - どうしてこの話がまだまだ伸びないのか疑問すぎる！！なんだか分厚い辞典でこの小説欲しいくらいなんか好きです！！！！！！最初の出会いからこの話の終わりまでずっとニマニマしちゃって覚醒の時なんかボロボロ泣いちゃいました！！めっちゃいい話を書いてくれて (10月8日 4時) (レス) @page33 id: 3d0234bb1d (このIDを非表示/違反報告)
妖々梅雨里(プロフ) - 最初から、最後まで。主人公の感情にこちらも身を乗り出してしまうかと思うくらい入り込めました。最後にはつい感極まって泣いてしまいました。素晴らしい作品をありがとうございます!!! (2021年12月25日 23時) (レス) id: f5b2ce54f6 (このIDを非表示/違反報告)
ななし - とても素敵な物語でした…語彙が乏しいことにここまで後悔する日が来ようとは…!!1冊の小説を読んだ気分です。本当に本当に素敵な物語をありがとうございました！！ (2021年4月6日 23時) (レス) id: 31e2beb33a (このIDを非表示/違反報告)
つ旦(プロフ) - ここ最近で一番作品の世界にのめり込んでしまいました。距離感や環境に心温まり、ストーリーを読むにつれて心満たされていく感覚が最高でした。素敵な作品を書いてくださり本当にありがとうございます。 (2021年2月1日 17時) (レス) id: 4806c4a672 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：江之子
| 作成日時：2020年6月25日 2時
