産屋敷家長女の物語

弐拾肆 ページ33

堕姫が部屋を訪ねて来てから、なるべく雛鶴とともに行動して、それ以外は堕姫に会いに行った。理由は簡単で雛鶴に興味を持たさせない為。もう雛鶴は蕨姫花魁が鬼だということに気が付いている。でもやはり見られている感じがするから、まだ天元には報告が出来ていない。それは私も同じこと。堕姫は私と雛鶴が一緒に京極屋に来たことを知っている。なので私が下手なことをすると雛鶴まで危うくなってしまうかもしれない。けれどこうなることを予想していたので、京極屋に来る前に鬼を見つけた時の確認をしていた(合言葉を決めておいた)の。

”『藤の花が恋しいですね。(鬼を見つけました)』

これなら2人で楽しかったことを思い出しているように聞こえるわ。

「ねぇ、A。」

『如何なさいましたか？蕨姫花魁。』

今は蕨姫花魁と一緒にいる。私を気に入っているみたいで、よく呼び出されるのよ。喜んでいいのか、いけないのか分からないわね。

「あんたとよく一緒いる雛鶴って奴なんか隠してる感じがするわよ。私に対して嫌な視線を送って来るのよね。」

元くノ一とはいえ相手は上弦の鬼。誤魔化しきれなかったのね。これ以上ここにいるのは危ないわ。

『そうなのですか？雛鶴はとても優しい人でしたのに。蕨姫花魁に対してそんなことをしていたのですね。それはいけませんわ。私からも言っておきますわ。あら、そういえば____』

私が話を逸らすと、雛鶴に関する話は終わった。どうやって雛鶴を逃がそうかしら。毒は飲ませたくない。けれどそうも言ってられなくなってきたのも事実。まさかここまで早く雛鶴に目を付けるなんて。一応私は解毒剤を持っているけれど、上手くいくかも分からない賭けをさせることなんて出来ないわ。

蕨姫花魁との話も終わって雛鶴の元へ来た。どうしましょう。___っ!!何故か堕姫の気配がしない。隠しているのかとも思ったけれど、本当に何も感じない。話すなら今しかない。

『雛鶴、落ち着いて聞いてね。蕨姫花魁は貴女を疑っているの。だからなるべく早く此処を出なさい。』

「っ!! A様を置いてそんなこと出来ません。」

明らかに困惑しているわね。でも、やってもらわないと。

『安心して、私は今のところ大丈夫よ。疑われていない。それに、藤の花で染めた布に包んで日輪刀も持って来ているの。いざとなれば戦うことも出来るわ。だからお願い、言うことを聞いて。』

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