手袋−８ ページ45
＜Yuzuru Side＞
人生で二度目の告白。
十年も経って、同じ相手にするなんて想像もしていなかった。
けれど、今は、それも運命だと思える。
「結弦くん？」
引き留めておきながら、なにも言わない俺をAが訝し気に見つめてくる。
俺は、目を瞑ると、ゆっくり深呼吸をした。
「A」
シートベルトを外し、Aのほうに体を向ける。
「俺、Aのことが―――」
ブーン、ブーーン……、ブーン、……
静かな空気を揺らす、振動音。
「……、…………」
「…………………」
「……電話だろ、出なよ」
「あ、うん」
タイミング、悪いな。
Aはバッグの中に手を入れてスマホを探していたようだったけど、
『―――もしもし、A？』
誤ってスピーカーのマークに触れたのか、男の声が聞こえてきた。
『俺だけど』
「ま、待って、蒼」
スマホをバッグから取り出したAは慌てた様子で画面をタップすると、俺から顔を背けて、スマホを耳に当てる。
「今、外なの。…………うん、後で電話するね」
短いやり取りの後、Aはスマホをバッグに戻して、気まずそうな顔で俺を見た。
「ごめんね。……話、なんだっけ？」
「いや、なんでもねーよ」
タイミングを逃しただけでなく、完全にそういう気分じゃなくなった。
それよりも―――
「さっきの電話、誰？」
「あ、うん。大学のときの友達」
俺の眉がつり上がっているのだろう。Aが引き攣った表情で答える。
「ふーん、ずいぶん親密な感じだけど。ただの友達？」
Aを気安く呼び捨てにする相手。Aもアオイって親しそうに呼んでいて。
こんな真夜中に遠慮なく電話してくるのは、ただの友達の枠を超えている。
「……、……ただの友達、だよ」
俺から目をそらしたAが……一瞬、前髪に指で触れるのを、俺は見逃さなかった。
だから、もっと上手く嘘をついてくれって……。
「明後日からスペインに行く。しばらく日本を離れるから」
俺は、あえて事務的な口調で伝える。
「え、そうなの？ どのくらい？」
「二週間。帰国して、すぐその後に今度はカナダに行く予定。しばらく会えないから」
「うん、わかった」
ずいぶん、あっさりしてるよな。
僅かな感情の綻び、温度差。
俺は、急にAの存在を遠くに感じていた。
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エミル(プロフ) - 鹿さん» 鹿さん、コメントありがとうございます。しばらくじれったい状態を続ける予定です(笑) 罪悪感と妄想の狭間で悩みますが、結局妄想には勝てない。心の中で羽生さんに謝りながら書いています(^_^;) (2022年1月12日 22時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - ちなみに、罪悪感は、私の場合三日くらい経ったら消えます(笑)最初はすごくあったけど、結局妄想は止まらない感じ…。申訳ないですよね、ほんと。 (2022年1月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - くっつきそうでくっつかない(笑)じれったい二人をまだまだ見ていたいです＾＾毎日楽しみにしています！ぜひぜひ羽生さんに幸せをあげてください！ (2022年1月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミル | 作成日時：2021年12月18日 20時
