手袋−５ ページ42
「えっと……？」
「ゆづの中学の同級生だったわよね。以前、ゆづが昔連れて来た」
「あ、はい。綾瀬Aです」
「そうそう、綾瀬さん」
奈々美先生はなにが楽しいのか、破顔している。
「やっぱりねー、ゆづはしつこいから、一度好きにな」
「ちょっと、先生！ 余計なこと言わなくていいし」
「はいはい。ほら、せっかく貸し切りにしているんだから、ゆづは滑ってきなさいよ。私は綾瀬さんとおしゃべりしてるから。ね、綾瀬さん？」
「え、あ、はい」
結弦くんをリンクのほうに追い払う仕草をすると、奈々美先生は私の背中を押した。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
ベンチに座った私は、奈々美先生からホットコーヒーを受け取る。
私と奈々美先生を気にしていた結弦くんは、今はもう、真剣な表情で氷と向き合っていた。
「綾瀬さん」
「はい」
「ゆづの彼女……ではないのよね、まだ」
「……はい、え？」
まだ……とは？ 私が首を傾げていると、
「でも、ゆづの気持ちには気づいているでしょう？」
奈々美先生は目を細めて、私を見据えてきた。
「冷静なふりしていても、ゆづは顔に出やすいからねー」
「……、………」
クスクスと笑う奈々美先生を前に、私はどんな反応をしていいのかわからなくて、うつむく。
「昔、あなたはゆづにとって特別だって言ったの、覚えてる？」
「はい」
「スケートに集中するためにあなたと距離を置いたかもしれないけど、ゆづにとって、ずっとあなたは特別な人だったんだと思う」
「……私は……結弦くんの特別になれるような人間じゃありません」
いたって、普通の人生を、普通に生きてきた。
勉強も仕事も私なりに頑張ってきたけれど、結弦くんにくらべたら、あまりにもちっぽけな存在だ。
「綾瀬さんが迷っているのは、それが理由？」
「え？」
「自分はゆづに相応しくないと思ってる？」
「……はい」
「じゃあ、綾瀬さんは、ゆづが金メダリストだから好きなの？ 肩書きがなかったら、ゆづを好きにならなかった？」
奈々美先生が優しく問いかけてくる。
「それは、違います」
紳士で優しいのに、強引なところがあって。
上目遣いで可愛く甘えてきたかと思えば、凛とした精悍な表情を見せる。
ご機嫌になると鼻歌が出ちゃうところ。
まっすぐでブレない心、信念を持っているところ。
時折、見せてくれるくしゃっと笑う顔。
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エミル(プロフ) - 鹿さん» 鹿さん、コメントありがとうございます。しばらくじれったい状態を続ける予定です(笑) 罪悪感と妄想の狭間で悩みますが、結局妄想には勝てない。心の中で羽生さんに謝りながら書いています(^_^;) (2022年1月12日 22時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - ちなみに、罪悪感は、私の場合三日くらい経ったら消えます(笑)最初はすごくあったけど、結局妄想は止まらない感じ…。申訳ないですよね、ほんと。 (2022年1月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - くっつきそうでくっつかない(笑)じれったい二人をまだまだ見ていたいです＾＾毎日楽しみにしています！ぜひぜひ羽生さんに幸せをあげてください！ (2022年1月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミル | 作成日時：2021年12月18日 20時
