検索窓
今日:23 hit、昨日:2 hit、合計:84,987 hit

二度目のデート−1 ページ5

<Yuzuru Sude>

明け方まで雨を降らせていた低気圧は東へ去って、洗われたばかりの樹葉の色彩は、陽の光を弾いて眩しいばかりに鮮やかだった。

本格的なシーズンが始まる直前のこの時期、これまでの俺なら精神的にも張り詰めていて、景色に心を奪われる余裕なんて皆無だったのに。

今は、目に映る小さなことでも新鮮に思える。


 
「ただいまー」

毎年出演しているチャリティー番組の事前打ち合わせの帰り道、久しぶりに実家へ寄る。

「あら、おかえりなさい」

一人暮らしは自由で気ままだけど、こうして「おかえり」って迎えてくれる家族がいるのは幸せだなと、リビングで迎えてくれた母さんと姉ちゃんの顔を見て思う。

本当はもう少し実家で甘えていたかったんだけどなー。
引退して早々に、アラサー男子は独立すべしと、追い出されてしまった。


「そういえば、お父さんに頼んでいたお店の件だけど、話を通しておいたからって言っていたわよ」

「あ、そうなんだ。ありがと」

父さんが懇意にしている、郊外の和食のお店。
家族でも何度か行ったことがあって信頼できるから、Aとの食事に使わせてもらおうと考えていた。

「いつでも個室をご用意するから、日にちが決まったら連絡くださいって」

「ん、わかった」

今日にでもAに都合聞いてみよっと。
頭の中で自分のスケジュールを組み立てていると、じっ……とこちらを窺っている姉ちゃんの視線に気づく。

「なに?」

「んー、誰と行くのかなーと思ってね。予約は二人なんでしょう?」

「……友人だけど」

「女の子の?」

話の流れが触れて欲しくない方向にきて、そっぽを向くと、母さんとばっちり目が合ってしまう。
どうやら、母さんも俺の返答を待っているらしい。


「お店の雰囲気からして男二人で行くところじゃないもんね」

「そうだよ、悪い?」

「まさか。あんたにも春がきて、お姉ちゃんは嬉しいわ」

「でも、友人だから」

春だと決めつけるのは、まだ早い。


「どこで出会った方なの?」

それまで黙って聞いていた母さんがここで口を挟んできた。

好奇心というより心配げな表情の母さんを見て、相手の素性を気にしているんだなとわかる。


「地元の子、中学の同級生だから」

「中学の? もしかして―――綾瀬さん?」

危うく、俺は椅子から飛び上がりそうになった。


 
 
 

二度目のデート−2→←待ち伏せ−4



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (71 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
203人がお気に入り
設定タグ:フィギュアスケート , 羽生結弦   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

エミル(プロフ) - 鹿さん» 鹿さん、コメントありがとうございます。しばらくじれったい状態を続ける予定です(笑) 罪悪感と妄想の狭間で悩みますが、結局妄想には勝てない。心の中で羽生さんに謝りながら書いています(^_^;) (2022年1月12日 22時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - ちなみに、罪悪感は、私の場合三日くらい経ったら消えます(笑)最初はすごくあったけど、結局妄想は止まらない感じ…。申訳ないですよね、ほんと。 (2022年1月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - くっつきそうでくっつかない(笑)じれったい二人をまだまだ見ていたいです^^毎日楽しみにしています!ぜひぜひ羽生さんに幸せをあげてください! (2022年1月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:エミル | 作成日時:2021年12月18日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。