手袋−１ ページ38
「―――え、東京に出張？ 一ヶ月も？」
『長期出張っていうか、研修かな。グループ系列の他業種を経験するチャレンジ制度なんだけどね』
「そうなの……」
蒼に会うために電話をしたら、思わぬ返答。
「じゃあ、戻ってくるのは11月の初め頃？」
『そうなるね』
ようやく決心したのに……。また先延ばしになっちゃう。
『なにか話があった？』
「え、あ、うん」
『電話では言えないこと？』
「……できれば、会って話したいかな」
言いにくいことだからこそ、面と向かって話をしないのは卑怯な気がした。
『帰ってきたら、連絡するよ』
「わかった。気をつけてね」
『ありがとう。……A？』
「うん？」
『あいつと……、まだ会ってるんだ？』
「……、…………」
聞こえてきた声は、蒼の声じゃないみたいに険を含んでいて、非難めいたものを感じた。
『本当は俺、今、仙台を離れるべきじゃないよね』
私の沈黙を肯定と取った蒼がため息まじりに言う。
「……蒼」
『ごめん、電話でする話じゃなかったか』
自嘲気味に笑う蒼に、私はうまく返せなかった。
―――翌日。
私は、結弦くんとドライブへ行くために、軽めのお弁当を用意する。
練習前だからお腹にたまらない、あっさりしたメニュー。あとスープジャーに具沢山のお味噌汁を。
今日、練習見学に来てって誘われたけど、いいのかな。
リンクのスタッフさんとかに一緒にいるところを見られちゃって平気なんだろうか。
「あー、いい匂いがする！」
玄関のドアが開く音がしたと思ったら、大きなリュックを背負った航希がキッチンに顔を出した。
「おかえり」
「ただいまー。一つ、もーらい！」
「ダーメ！」
アスパラとエリンギの肉巻きを摘まもうとした航希の手を軽く叩く。
「ケチ！」
「手ぐらい洗いなよ。っていうか、汗臭い！」
サッカーの試合後だからしょうがないとはいえ、汗と泥が混じったような匂いはいただけない。
「年頃の男子に臭いはなくねー。傷つくわ」
航希はぶつぶつ言いつつ、リュックをリビングのソファに投げ置くと、バスルームへと向かった。
年頃、ね。
航希は、ちょうど結弦くんがトロントに拠点を移したぐらいの年齢だ。
結弦くんは当時から汗っかきだったけど、全然匂ったりしなかったなー。女子以上に肌もすべすべで、髪の毛は天使の輪が乗っかっていて、男臭さとは無縁な感じだった。
今も変わらないけど。
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エミル(プロフ) - 鹿さん» 鹿さん、コメントありがとうございます。しばらくじれったい状態を続ける予定です(笑) 罪悪感と妄想の狭間で悩みますが、結局妄想には勝てない。心の中で羽生さんに謝りながら書いています(^_^;) (2022年1月12日 22時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - ちなみに、罪悪感は、私の場合三日くらい経ったら消えます(笑)最初はすごくあったけど、結局妄想は止まらない感じ…。申訳ないですよね、ほんと。 (2022年1月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - くっつきそうでくっつかない(笑)じれったい二人をまだまだ見ていたいです＾＾毎日楽しみにしています！ぜひぜひ羽生さんに幸せをあげてください！ (2022年1月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミル | 作成日時：2021年12月18日 20時
