ただ、好きなだけ−３ ページ35
＜Yuzuru Side＞
誰もいない駐車場で車のトランクからキャリーケースを下ろす。前髪を揺らす秋風は冷たく、俺はジャージのジッパーを首まで上げた。
もうすぐグランプリシリーズが始まる。
その場に自分が選手としていないというのは寂しくもあるけど、プレッシャーから解放された立場で迎えるシーズンが楽しみでもあった。
リンクサイドのベンチに座り、スマホを確認すると、Aからメッセージがきていた。
A練習お疲れさま。明日、いつもの場所で待ってるね
短い文章の後に送られた、プーさんの“おやすみ”スタンプ。
画面に指で触れて、笑みがこぼれる。
誰かと会う約束の日がこんなに待ち遠しいなんて、これまで知らずにいた。
ウォーミングアップを終わらせて、リンクを周回していると、奈々美先生が入ってくるのが見えた。
「遅くなってごめんね」
「いえ、こちらこそ、無理なお願いですみません」
一人で練習をしているとどうしても独りよがりになってしまうから、客観的な視点でスケートを見てもらいたくて、奈々美先生に指導をお願いした。
「指導っていっても、私がゆづに教えることなんてもうないんだけど」
「見たまんまの感想を言ってもらえたらいいですから」
奈々美先生にそう告げて、俺はリンクへ飛び出した。
引退しても、向上心は持ち続けたい。
演技を観た人にさすが“羽生結弦”だと言わせたいし、少しでも元気や勇気を与えられたら―――
ジャンプの軌道に入り、氷を蹴って、舞い上がる。
すべてを捨てて手に入れたこの景色、そう易々と失ってたまるか。
「フォームも綺麗。軸もブレてない。さすが、羽生結弦」
「ありがとうございます」
恩師から欲しかった誉め言葉をもらい、肩の力が抜ける。
「ゆづ、スケ連から解説者の依頼とかきてるんじゃないの？」
「あー、まあ……そうっすね」
「その感じだと引き受ける気はなさそうね」
気のない俺の返答に、奈々美先生がクスっと笑う。
「声をかけてもらえるのはありがたいんですけど、冷静な解説ができる気がしないんですよねー。熱が入ってしゃべりまくってしまいそうだし」
「アハハ、たしかに。でも、スケ連としては、ゆづが会場に来てくれたほうが集客できるからね」
フィギュアスケートの発展に尽力できるなら、宣伝に使われるのは拒まないけど……。引退したからには裏方に徹したいし、選手の妨げになるとかもってのほかだ。
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エミル(プロフ) - 鹿さん» 鹿さん、コメントありがとうございます。しばらくじれったい状態を続ける予定です(笑) 罪悪感と妄想の狭間で悩みますが、結局妄想には勝てない。心の中で羽生さんに謝りながら書いています(^_^;) (2022年1月12日 22時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - ちなみに、罪悪感は、私の場合三日くらい経ったら消えます(笑)最初はすごくあったけど、結局妄想は止まらない感じ…。申訳ないですよね、ほんと。 (2022年1月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - くっつきそうでくっつかない(笑)じれったい二人をまだまだ見ていたいです＾＾毎日楽しみにしています！ぜひぜひ羽生さんに幸せをあげてください！ (2022年1月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミル | 作成日時：2021年12月18日 20時
