理解不能−４ ページ22
人目につきにくい場所に停まっている結弦くんの車を見つけたとき、驚いた。
迎えに行くという結弦くんからの申し出は、あまりに非現実的で。お酒に酔ったせいで見た夢かと思っていたかから。
「今日は誰と飲んでいたの？」
車が走り出してすぐ、結弦くんが聞いてくる。
「図書館に置く本を購入している出版社の人たち」
「図書館の本って出版社から買うんだ」
「本によるかな。地元の書店や問屋から買うこともあるし。フィギュアスケートの雑誌は書店から購入するのが多いよ」
「へえ、そうなんだ」
こんなこと興味あるのかしら？ と、内心思いつつ、やり取りしていたら、
「男の人も一緒だった？」
低めの声で問われた。
「え、うん。出版社から三人来ていたけど、全員男性だよ」
「……ふーん」
あれ、心なしか……車内の温度が下がったような……。
ぶるっと体を震わす。
前髪をかきあげる仕草と、きつく結ばれた唇。
どことなく厳しさが窺える結弦くんの表情と低めのテンションに、私は後悔し始める。
「ごめんね」
「なにが？」
「疲れているのに、迎えに来てもらって」
結弦くんは優しいから、夜道を帰る私を心配してくれたんだろうけど……やっぱり、ちゃんと断ればよかった。
「べつに……。俺が来たかっただけだし」
「なにか私に用だった？」
思いつくことがなくて、私が尋ねると―――結弦くんは眉を寄せて、少し沈黙した後、口を開いた。
「だから、用がないと会いに来たらダメなの？」
「……、…………」
そんなわけない。
だけど、さっきから会話するたびに結弦くんが不機嫌になっていく。
どう答えるのが正解がわからない。
頭の中で忙しく言葉を探しているうちに、結弦くんが横でため息をついた。
「……ごめん、変なこと聞いた。忘れて」
ちらっとこっちを見た結弦くんと目が合う。
それは、びっくりするぐらい頼りない瞳で、いつもの強気さは欠片もなかった。
「私は、結弦くんが迎えて来てくれて嬉しいよ。ただ、その……結弦くんはなんで―――」
言いかけて、私は逡巡する。
だって、まさか……そんなこと、あるかな。
結弦くんは世界規模で人気があるフィギュアスケーターで、たくさんのファンがいて、女の子は選り取りみどりで。
こんな勘違いするのすら、畏れ多い。
自惚れが過ぎる。
だけど―――
「Aに会いたかったから」
耳に甘く響いた言葉は、私の思考を溶かした。
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エミル(プロフ) - 鹿さん» 鹿さん、コメントありがとうございます。しばらくじれったい状態を続ける予定です(笑) 罪悪感と妄想の狭間で悩みますが、結局妄想には勝てない。心の中で羽生さんに謝りながら書いています(^_^;) (2022年1月12日 22時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - ちなみに、罪悪感は、私の場合三日くらい経ったら消えます(笑)最初はすごくあったけど、結局妄想は止まらない感じ…。申訳ないですよね、ほんと。 (2022年1月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - くっつきそうでくっつかない(笑)じれったい二人をまだまだ見ていたいです＾＾毎日楽しみにしています！ぜひぜひ羽生さんに幸せをあげてください！ (2022年1月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミル | 作成日時：2021年12月18日 20時
