理解不能−２ ページ20
＜Yuzuru Side＞
適当に夕飯を済ませると、俺はソファに座って、Aに電話をかけるためスマホの画面をタップした。
無機質なコール音を聞きながら、緊張を逃すように息を吐く。
なぜか知らんけど、Aは俺が女慣れしてると思ってる。
おかしいな、世間のイメージでも真面目で通っているはずなのに。
好きな子を誘うだけで手汗びっしょり、ガチガチに緊張してんのになー。アラサーにもなって。
……っていうか、電話出ないじゃん。
金曜日の夜だし、仕事帰りにご飯でも食べに行っているのかも……と、出鼻をくじかれた気分で切ろうとしたら、
『―――もしもし？』
いつもより少し低めの声が聞こえてきた。
「A？ 今、いい？」
『ごめん、今、外にいるの』
たしかに背後から騒がしい声がして―――その中には、男の声も混じっていた。
俺、耳いいんだよな。
「わかった。じゃ、家に帰ったら電話くれる？」
『え、でも、今日は遅くなると思うよ』
「何時ぐらい？」
『たぶん……日付が変わる前ぐらい、かな』
そんなに遅くなんのかよ。
喉まで出かかった言葉をぐっと呑み込む。
「いいよ、ちょうど練習が終わる頃だと思うし。電話して」
『わかったけど……。急ぎの用？』
「急ぎじゃねーと電話したらダメなの？」
質問に質問で返すと、Aが一瞬沈黙した。
やべ、がっつきすぎた？
『えっと、じゃ、後で電話するね』
「ん、よろしく。あ、A」
『なに？』
「遅くなるんなら、気をつけて。駅からタクシー拾えよ」
最寄りの地下鉄駅からAの家まで歩いて十五分以上はあるはず。
『う、うん。ありがとう』
「じゃあね」
通話を切ってから、スマホをローテーブルに置く。
最後、困惑してたな、あいつ。
余計なお世話だったか。
練習へ行くための準備をしながら、いろんな思いが頭を駆け巡る。
誰と一緒だったんだろ、とか。
男と二人きりじゃねーよな、とか。
高校の頃と違って、お互いに社会的な立場があって、交友関係がある。
すべてを把握なんてできっこない。
わかっていても―――気になってしまう。
完璧な、嫉妬。
独占欲。
好きだと認識した途端、歯止めが効かなくなっている感情に我ながら驚く。
だけど、同時に思う。
それでいいじゃんって。
だって、もう我慢しなくていいから。
スケートのために何かを取捨選択する必要はもうないんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 203人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
エミル(プロフ) - 鹿さん» 鹿さん、コメントありがとうございます。しばらくじれったい状態を続ける予定です(笑) 罪悪感と妄想の狭間で悩みますが、結局妄想には勝てない。心の中で羽生さんに謝りながら書いています(^_^;) (2022年1月12日 22時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - ちなみに、罪悪感は、私の場合三日くらい経ったら消えます(笑)最初はすごくあったけど、結局妄想は止まらない感じ…。申訳ないですよね、ほんと。 (2022年1月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - くっつきそうでくっつかない(笑)じれったい二人をまだまだ見ていたいです＾＾毎日楽しみにしています！ぜひぜひ羽生さんに幸せをあげてください！ (2022年1月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：エミル | 作成日時：2021年12月18日 20時
