心のブレーキ−２ ページ16
「あれ、小早川さんじゃないですか」
お店が入っていた雑居ビルの階段を降りていると、上がってきた女性にすれ違いざまに声をかけられた。
「篠崎さん、お疲れさま」
会社の人かな、蒼が余所行きの笑顔を浮かべている。
「もしかして、彼女サンですか？」
女性が私を品定めするようにさっと視線を走らせた。
「大学時代の友人」
「へぇ……。小早川さん、今度は私とも飲みに行きましょうよ」
「今度、みんなとね。じゃ、また明日」
蒼は適当に返事をすると、私に階段を降りるよう促した。
「モテるね、小早川くん」
「俺がっていうわけじゃないよ。彼女、派遣の子なんだけど、会社の男性を狙ってるってもっぱらの噂」
なるほど、エリート狙いか。
蒼の場合、それだけじゃなさそうだけど。
今までも二人でいると、蒼の彼女に間違えられることがあった。
冷やかしてくる男性陣と違って、女性からは嫉妬と羨望と、えーこの子が？ みたいながっかり感を漂わされる。
蒼は女の子にモテる。だけど、私はそれを気に留めたことがない。
結弦くんなら―――嫉妬してしまうのに。
きっと、これが答え。
私の蒼に対する感情は、大切な友達。
「A」
「ん？」
「俺に話があったんじゃない？」
「……、………」
「告白の返事？」
「うん」
声のトーンや微かな表情の違いから、私の体調の変化も考えも、蒼には見透かされてしまう。
わかり合える気楽さは、反面、隠し事ができないってこと。
立ち止まった蒼は、私からの言葉を待っている。
「ごめん。……私、蒼とはやっぱり友達でいたい」
男女の友情なんか、どっちかが恋愛感情を持った時点で終わりだって、それぐらい私もわかっている。
今の関係のままがいいなんて、私の勝手な都合。
「うん、Aはそう答えるだろうなって思っていたよ」
「……蒼」
「でも、理由は知りたいかな」
悲しげに微笑んだ蒼は、地下鉄の駅へと歩き出す。
「俺には友達以上の感情は持てない？ それとも―――SUV車に乗った彼のせい？」
「――――え……」
蒼の隣に並ぼうとして、今度は私が歩みを止めた。
「この前、Aが車に乗り込むのを見たんだよね」
「……、………」
バクバクと心臓が鳴って、背筋に汗が伝う。
「……蒼……。その……顔、見えた？」
「顔って男の？ そこまでは見えなかったけど……Aの服装から、デートなんだろうなとは思った」
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エミル(プロフ) - 鹿さん» 鹿さん、コメントありがとうございます。しばらくじれったい状態を続ける予定です(笑) 罪悪感と妄想の狭間で悩みますが、結局妄想には勝てない。心の中で羽生さんに謝りながら書いています(^_^;) (2022年1月12日 22時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - ちなみに、罪悪感は、私の場合三日くらい経ったら消えます(笑)最初はすごくあったけど、結局妄想は止まらない感じ…。申訳ないですよね、ほんと。 (2022年1月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - くっつきそうでくっつかない(笑)じれったい二人をまだまだ見ていたいです＾＾毎日楽しみにしています！ぜひぜひ羽生さんに幸せをあげてください！ (2022年1月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミル | 作成日時：2021年12月18日 20時
