心のブレーキ−１ ページ15
「悪い、遅くなった」
一杯目の生ビールを飲み終わる頃にやって来た蒼は、夏物のスーツをハンガーにかけてから、丸いハイテーブルを挟んで私と向き合う。
「お疲れさま。生ビール？」
「うん」
店員さんに生ビールを二つ注文する。
「ここ、久しぶりだよね」
「そうだね」
蒼が勤める銀行からわりと近くにある、立ち飲み屋。
リーズナブルな価格と豊富なメニューで人気があって、今夜も仕事帰りのサラリーマンで賑わっていた。
「「乾杯」」
生ビールのグラスをカチンと合わせる。
「お仕事、相変わらず忙しそうだね」
「中間決算前だから。―――なに注文する？」
「蒼に任せるよ」
「そう？」
蒼はネクタイを緩めながら、適当に食べ物を頼んでいく。
実はあまり食欲がない。
でも、蒼とは食の好みはぴったり一致しているから、甘えられるし、気兼ねがない。
こういうの、楽だなって思う。
立ち飲みも、生ビールに合わせて、オジサン系おつまみをつつくのも、結弦くんには敬遠されそうでできない。
「そうそう、この前新しくオープンしたワインバー、同期が行ったけどよかったらしいよ。今度、行く？」
スマホの画面に表示されたそのお店のサイトを見せてくれながら、蒼が言う。
「日替わりでグラスワインを何種類が出しているから、いろんなワインが飲める。あとめずらしいチーズが揃ってるって」
「へー、そうなんだ。行きたい」
雰囲気もよさそうな店内の写真を見て、思わずいつもの調子で答えてから、しまったと思った。これから話す内容の結果によっては、私たちの関係は気まずくなってしまうかもしれないのに。
しばらくして運ばれてきたお料理は、どれもあっさりとしたものや消化のよさそうなものばかりで、不思議に思った私が蒼を見ると、
「A、食欲ないんでしょ。夏バテ？」
私を気遣う優しい目がそこにあった。
「あ、うん。そんなところかな」
蒼が優しいのはいつものこと。
でも、ますます話を切り出しにくくなる。
少しでも話しやすいように、あえて騒がしいお店を選んだけど、思うように言い出せない。そんな自分に苛立ちを感じているうちに、テーブルの上のお料理は空になってしまった。
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エミル(プロフ) - 鹿さん» 鹿さん、コメントありがとうございます。しばらくじれったい状態を続ける予定です(笑) 罪悪感と妄想の狭間で悩みますが、結局妄想には勝てない。心の中で羽生さんに謝りながら書いています(^_^;) (2022年1月12日 22時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - ちなみに、罪悪感は、私の場合三日くらい経ったら消えます(笑)最初はすごくあったけど、結局妄想は止まらない感じ…。申訳ないですよね、ほんと。 (2022年1月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - くっつきそうでくっつかない(笑)じれったい二人をまだまだ見ていたいです＾＾毎日楽しみにしています！ぜひぜひ羽生さんに幸せをあげてください！ (2022年1月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミル | 作成日時：2021年12月18日 20時
