二度目のデート−１０ ページ14
「結弦くんが私に遠慮して本音を言ってくれなくなったら、そっちのほうが嫌かな。だから、今のままの結弦くんでいて欲しい」
「そっか、ありがと」
結弦くんはハンドルから顔を上げると、ふにゃっと笑った。
「あとさ、俺、現役引退するまでスケート一筋だったから」
うん、知ってる。
「それだけは妥協せずに取り組んできたって胸を張れる。恋愛が入り込む余地なんてない。だいいち、他の子と恋愛するぐらいなら、Aと付き合うのを我慢した意味ないし」
「う、うん」
あれ、結弦くんはさも当たり前にしゃべっているけど、結構デレること言ってない……？
「Aのことを知りたいのと同じぐらい、Aにも俺を知ってもらいたい」
うわぁ……っ。
なんなの、どんな顔すればいいの？
揺るぎのない、まっすぐで強い眼差しは、私から思考も呼吸も奪ってしまう。
だけど―――
「―――ふっ……」
身動きできずにいた私の前で、結弦くんがいきなり吹き出した。
そして、顔をそむけたかと思うと、お腹を抱えてケタケタと笑い始めるじゃないの。
「……信じられない。からかったの？」
「違う、違う」
否定しながらも、目尻に溜まった涙を指で拭っている結弦くんはまだ肩を震わせている。
ここで泣くほど笑う！？
「だって、Aが溺れた魚みたく口をパクパクさせてるから」
「それが涙が出るぐらいおもしろいと？」
ひどい、感動して損した！
「ううん、A、可愛いなーって」
「そんな上辺だけの言葉で誤魔化されないから」
「いや、マジだって」
「嘘つき！」
まだ笑みを口元に残したままの結弦くんに手を振り上げてぶつ仕草をすると、
「嘘じゃない」
結弦くんは私の手をそっと捕らえて、包み込む。
「話したことも、Aを可愛いと思ったのも、全部本当」
……ズルい。
ふざけた表情を消した、真剣な顔つき。
切れ長の一重の瞳は優しく細められて、囁く声は低くて甘い。
なにも反論できないよ。
感情の浮き沈みが激しくて、揺れる心に自分がわからなくなる。
心地がいいのに、怖い。
簡単に結弦くんに惹かれてしまう自分が―――怖い。
「そろそろ帰ろっか」
私の変化を敏感に察した結弦くんは手を放すと、シートベルトをつけた。
「うん」
私もシートベルトを締めて、助手席のシートにもたれる。
結弦くんとの二度目のデート。
帰りたくないと思う私は、もう結弦くんに堕ちているのかもしれない。
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エミル(プロフ) - 鹿さん» 鹿さん、コメントありがとうございます。しばらくじれったい状態を続ける予定です(笑) 罪悪感と妄想の狭間で悩みますが、結局妄想には勝てない。心の中で羽生さんに謝りながら書いています(^_^;) (2022年1月12日 22時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - ちなみに、罪悪感は、私の場合三日くらい経ったら消えます(笑)最初はすごくあったけど、結局妄想は止まらない感じ…。申訳ないですよね、ほんと。 (2022年1月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - くっつきそうでくっつかない(笑)じれったい二人をまだまだ見ていたいです＾＾毎日楽しみにしています！ぜひぜひ羽生さんに幸せをあげてください！ (2022年1月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミル | 作成日時：2021年12月18日 20時
