二度目のデート−８ ページ12
結弦くんが家族で利用することもあるという懐石料理のお店は、落ち着いた佇まいの個室と女将さんのきめ細やかな心遣いが居心地よくて、最初は緊張していた私もデザートが出る頃にはすっかりくつろいでしまっていた。
お料理もお酒もとびきり美味しくて、結弦くんがおしゃべりなのは相変わらずで。
人生の運をここで使い果たしちゃったんじゃないかと思うぐらい、楽しくて、幸せな時間。
結弦くんが目の前にいて、笑っている。
夢みたいだし、夢かもしれない。
「ごちそうさまでした」
自分が誘ったんだからと、結弦くんは私が自分のぶんを支払うのを拒否した。
「今度は、私がお勧めのお店に誘うね」
奢られっぱなしなのは申し訳ないという気持ちで言ってから、ふと、今度があるのかって不安になる。
「うん、楽しみにしてる」
でも、結弦くんはうなづいてくれて、
「あー、だけど、できれば、またAの作ったお弁当が食べたいかも」
と、言った。
「お弁当？」
車の助手席に乗り込みながら、私は聞き返す。
「昔、作ってくれたでしょ。公園でデートしたとき」
「あ、うん」
一度だけのデート。
結弦くんがちゃんと覚えていてくれたことが嬉しくて、緩みそうになる頬を手で包む。
「また作ってくれる？」
顔を傾けて、私の目を覗き込んでくる。
形のいい唇の口角がキュッと上がっていて……結弦くん、これ確信犯だ。
私が断れないこと、知ってる表情。
「えー、やだ。作りたくない」
なんとなく悔しくて、素っ気なく返したら。
「……え……作ってくれないんだ……そっか……」
しゅん……と、効果音がつきそうなぐらい、眉を下げて、うなだれてしまった。
「嫌なら、……うん、しょうがねぇけど……」
「嘘、冗談だよ」
突き出すように結ばれた唇が叱られた子犬みたいに可愛くて、あっさり降参してしまう。
無謀な挑戦だった。結弦くんのお願いに勝てるはずがない。
「私が作ったのでよければ」
「……いいに決まってんじゃん」
顔を上げて私を横目で見た結弦くんは、
「さっきのさー、マジで作るの嫌なんかって、ショック受けた。冗談ってひどくね？」
軽く睨んできた。
「だって、結弦くんは私が断らないとわかって言ってるんだもん。だから、つい」
「んなことねーって」
強い口調で否定した結弦くんは、体ごと私のほうを向く。
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エミル(プロフ) - 鹿さん» 鹿さん、コメントありがとうございます。しばらくじれったい状態を続ける予定です(笑) 罪悪感と妄想の狭間で悩みますが、結局妄想には勝てない。心の中で羽生さんに謝りながら書いています(^_^;) (2022年1月12日 22時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - ちなみに、罪悪感は、私の場合三日くらい経ったら消えます(笑)最初はすごくあったけど、結局妄想は止まらない感じ…。申訳ないですよね、ほんと。 (2022年1月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - くっつきそうでくっつかない(笑)じれったい二人をまだまだ見ていたいです＾＾毎日楽しみにしています！ぜひぜひ羽生さんに幸せをあげてください！ (2022年1月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミル | 作成日時：2021年12月18日 20時
