◆Love to Love you ページ34
―――2021年7月 日本
駅で拾ったタクシーを降りて、住宅街の細い通りに入ったところで、鼻先に水滴が落ちてきた。
折り畳み傘持って来ればよかった。
急な雨の多いこの時期、うっかりしていたと小さくため息をつく。
俺は、薄手のパーカーのフードをかぶり、小走りに目的地に向かった。
ほどなくして前方に見えてきたのは、くすんだ白を基調にした五階建てのマンション。
オートロックを解除しドアをくぐると、エレベーターに乗り込む。
この瞬間、俺はいつも二つの感情の狭間で揺れ動く。
それは、好きな子に会える期待と。
まだ彼女は俺のことを好きでいてくれるだろうか、という不安。
会うのは７か月ぶりだ。
年末の全日本、世界選手権からの国別対抗戦……その後のアイスショー。
地元に練習拠点を移したことで、以前よりは会える回数も増えるかと思ったけど、結局たいして変わらなかった。
俺と付き合うことに意味を見出せなくなったら？
他にいい男が彼女のそばに現れたら？
会いたいと伝えて、彼女の顔を見るまでの間、女々しいぐらい後ろ向きな気持ちに支配されてしまう。
彼女の部屋のドアの前でフードを脱ぎ、髪を整えてから、チャイムを押す。
すぐにドアの向こうから「はーい」という彼女の高い声が聞こえてきた。
―――ガチャ、とドアが開き、Aが顔を覗かせる。
あ、髪が短くなってる。
「おかえりなさい」
小さな変化に気を取られていた俺を見上げてくる、優しい笑顔。
「おかえり」と迎えてくれるのは、トロントから帰国して会っていたときの癖だ。
「うん、ただいま」
ホッとした俺が玄関へ入り、ドアが閉まると同時―――Aがぎゅっと腰に抱きついてきた。
「濡れるよ」
「ん、いいの」
雨の水滴が滲んだパーカーが彼女の肌に触れるのを心配して声をかけるけど、Aは俺にくっついたまま首を振る。
Aに応えるように俺も彼女の体に腕をまわした。
懐かしい甘い香りと、華奢で柔らかい感触。
スケートに没頭している間は眠っていた男としての欲望が頭をもたげる。
今すぐキスして、この子と一つになりたい！
と、気がはやるけど。
さすがにがっつきすぎなので、俺はそっと彼女の体を離して、額にキスするだけで我慢した。
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エミル(プロフ) - #Loveさん» #Loveさん、いつもコメントありがとうございます。羽生さん好きに貢献できて嬉しい〜(^o^)本当に励みになります！ちょこちょこ更新ですが、頑張ります！！ (2022年2月23日 16時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
#Love(プロフ) - またコメント失礼します。エミルさんのお話が好きすぎて毎日更新の通知が来ているか確認するくらいです笑 エミルさんが書く羽生くんがありありと想像できて、羽生くん好きに拍車がかかっています。これからも無理せず頑張ってください！！ (2022年2月23日 12時) (レス) @page16 id: bf26d2c99f (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - ゆきさん» ゆきさん、ご指摘ありがとうございます。名前、修正しました。 (2022年2月10日 17時) (レス) @page46 id: a72ef995e1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 名前の変更ができていない所がありますので、お手隙の際に訂正をお願い致します。 (2022年2月10日 16時) (レス) @page47 id: 7b86ca7caf (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 璃子さん» 璃子さん、短編も読んでくださり、ありがとうございます！元気に明るい「気」、そうですよね。羽生さんも頑張っていると思って、私も前向きに生活します。 (2021年11月7日 20時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミル | 作成日時：2021年9月11日 20時
