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軋む胸の奥ー7 ページ7

<Yuzuru Side>

それにしても、お見合いをしてからずっと杏南さんにリードされっぱなしだよな。

スケート以外に時間を割きたくない俺にすれば、好都合で。このまま杏南さん主導で進めたほうが楽なんじゃないかと、自分らしからぬ発想になる。

だって、胸に巣食っている掴めない感情が煩わしい。

大丈夫だよな。

Aとあの男のことも、結婚を決めれば自然と気にならなくなる。これまでどおり、友達として付き合っていける。


「ええ、よろしくお願いします」

これでいいんだ。
スケート以外のことで、心を搔き乱されたくない。

俺は自分の心に息づく感情に蓋をし、思考を遮断した。



「……結弦さん」

少し低めの杏南さんの声に気づいたときには、杏南さんが立ちあがり、俺の両肩に手を置いていた。

「あ、杏南さん?」

目を瞠った自分に影が落ちて、長く艶のある黒髪が頬に触れる。


次の瞬間、杏南さんの唇が自分のそれに重なっていた。

茫然とする自分とは反対に、杏南さんのキスは冷静で―――柔らかい舌は巧みに俺の唇をなぞり、口の中にするりと入り込んでくる。

「……、………」

「…………」

吐息と、ソファが軋む音。

肩に置いた手に重みをかけられて、そのままソファに押し倒される。


―――ここでもリードしてくるのか。

まあ、いいや。

杏南さんの体を支えながら、ぼんやりと思う。


絡まる舌も、誘うような杏南さんの指先も、どこか他人事で醒めきっている自分がいた。


 
 
どのくらい時間が経っただろう。
 
されるがままになっていた俺の体から重みがなくなり、杏南さんの唇が離れる。


見上げると、俺を観察するような杏南さんの目があった。


「……杏南さん?」

俺は肘をついて、上半身を起こす。杏南さんは体をずらして、俺の上から降りた。


「―――結弦さんって、本当に正直な方ですね」


「……え?」

乱れたスカートの裾を直した杏南さんは、微かな笑みを浮かべている。


「これまで何度かお話にでてきた同じマンションのお友達」

「…………」

「先ほど出会ったお隣の部屋の方でしょう?」

「……あ……」

「隠す必要ないわ」

間抜けな俺は、誤魔化すタイミングを逃し、黙ってうなずいた。


 
 
 

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設定タグ:羽生結弦 , フィギュアスケート   
作品ジャンル:恋愛
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エミル(プロフ) - ころねさん» キュンキュンしてもらえて、嬉しいです♡ すっかり可愛い羽生さんになってしまいましたが、しばらくこの状態が続きます(笑) (2022年11月28日 22時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
ころね(プロフ) - うわ〜キュンキュンします♡赤面する羽生さん、かわいすぎる(^^)でももどかしい! (2022年11月28日 22時) (レス) @page37 id: 800fd7d527 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 璃子さん» 二人の距離が縮まればいいなーと思いつつ、書いていますが……まだしばらく友達の予定(笑) (2022年11月18日 22時) (レス) @page27 id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
璃子(プロフ) - わぁぁ…ここで待て!ですか!!どうなっちゃうの?気になる〜〜 (2022年11月17日 22時) (レス) @page27 id: 9bf38dcb2c (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 璃子さん» 璃子さん、ありがとうございます。ライビュは大きな画面で羽生さんを観ることができるのがいいですよね。ドアップになるたび、変な声が出そうになるけど(^_^;) 可愛い羽生さんは、書いていて楽しいです。しばらく恋に翻弄されてもらう予定(笑) (2022年11月1日 22時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:エミル | 作成日時:2022年10月25日 21時

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