好きと言えないー５ ページ32
＜Yuzuru Side＞
だったら……どうして、嘘をついた？
「……A」
そっぽを向いているAの顔を覗き込んで、俺は―――胸を衝かれた。
下唇を噛んだAの目の縁は赤くなっていて、瞬きをすると、湛えていた涙が一粒静かに落ちる。
あー、ダメだ。
それまで心で渦巻いていた負の感情も、疑問も、いっぺんに消える。
俺は、衝動的にAを抱きしめた。
「ごめんね」
なにに謝っているのか、自分でもわからない。
だけど、俺の前でAが泣いている。
原因も理由もどうだっていい。好きな子を泣かせたら、それは自分の責任だと思った。
「ごめん、泣かないでよ」
胸が苦しい。
自分が泣くよりも、辛い。
そっか、好きな子の涙に男は弱いって、こういうことなんだ……。
腕の中に抱きしめたAの体は薄くて、すごく頼りなかった。
大切に、守らなきゃいけない存在。
脆くて壊れやすいガラス細工を扱うように、真綿に包んで優しく、甘やかしたい。
男の本能の奥で、庇護欲が刺激される。
それでいて、恋愛経験値の低い俺は、嗚咽を堪えて肩を震わせているAの背中を撫でることしかできなかった。
「……ごめんね、もう大丈夫だから」
しばらくして泣き止んだAが俺からそっと離れる。
「ソファに座ろっか」
俺は広げたバナーを元通りに畳み、手に持って立ち上がった。そこでふと思いついて、尋ねる。
「A、ご飯食べた？」
「え……、あ、まだ」
見下ろしたAの顔は、生気がない。
そういや、差し入れを母親が持たせてくれていたはず……。俺はリュックのファスナーを開けて、中を漁る。
「これでよかったら、食べな」
「……ありがとう」
今回コラボしたアーティストの方からいただいた、有名製菓店の洋菓子。ちゃんとしたご飯じゃなくて申し訳ないけど、ないよりマシだろう。
「コーヒー淹れるから、座ってて」
「ゆづ」
「ん？」
「いいよ、ゆづも疲れてるでしょう」
「あー、俺も飲みたいから」
確かに疲れてる。横になったら、すぐに眠れる自信がある。
でも、今は、Aになにかしてあげたかった。
泣かせた罪滅ぼし？ いや、違う。
好きな子が疲れているなら、癒してやりたい。できれば、笑顔にしたい。
自分にも献身的な一面があったことに驚く。
つか、心配してドアの前で立っている時点で、これまでの俺じゃねーわ。
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エミル(プロフ) - ころねさん» キュンキュンしてもらえて、嬉しいです♡ すっかり可愛い羽生さんになってしまいましたが、しばらくこの状態が続きます(笑) (2022年11月28日 22時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
ころね(プロフ) - うわ〜キュンキュンします♡赤面する羽生さん、かわいすぎる(^^)でももどかしい！ (2022年11月28日 22時) (レス) @page37 id: 800fd7d527 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 璃子さん» 二人の距離が縮まればいいなーと思いつつ、書いていますが……まだしばらく友達の予定(笑) (2022年11月18日 22時) (レス) @page27 id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
璃子(プロフ) - わぁぁ…ここで待て！ですか！！どうなっちゃうの？気になる〜〜 (2022年11月17日 22時) (レス) @page27 id: 9bf38dcb2c (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 璃子さん» 璃子さん、ありがとうございます。ライビュは大きな画面で羽生さんを観ることができるのがいいですよね。ドアップになるたび、変な声が出そうになるけど(^_^;) 可愛い羽生さんは、書いていて楽しいです。しばらく恋に翻弄されてもらう予定(笑) (2022年11月1日 22時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミル | 作成日時：2022年10月25日 21時
