好きと言えないー1 ページ28
―――康介が見つかったと、将悟くんから聡美ちゃんに連絡があったのは、探し始めて5時間が過ぎた頃だった。
勤めていた小学校の体育館倉庫にいたのを警備の人に発見されたらしい。
不法侵入にあたるけど大事にしたくない学校側の意向もあって、警察に通報されずにすんだとか。迎えに来たご両親が「責任を持って預かり、病院で治療をする」と約束をし、連れ帰ったそうだ。
「よかったね、無事で」
すっかり暗くなった住宅街を歩きながら、聡美ちゃんがしみじみと言う。
「……うん」
捜索中は張り詰めていた心が緩んだせいで、どっと疲れが襲ってきた。あちこち歩き回ったから、足が痛くて、フラフラだ。
康介が本気で自分の人生を終わらせようとしたのか、今となってはわからないけど。
あとはご両親に任せるしかない。
「―――うわぁ……」
駅へ向かう道のり、スマホを確認した私は思わず声を上げた。
ショーが終わった時間帯あたりから、ゆづからのメッセージが立て続けに入っている。
“今、どこにいる?” “なにかあった?”
“事故にあったんじゃないかと心配してる”
“メッセージ見たら、連絡して”
さらに着信も10件近く残っていて、かかってくる間隔が徐々に短くなり、最後の方は数分おき。
どうしよう……。なんと言って説明しよう、と思っているそばから、スマホが振動し始めて、私は心臓が跳ね返りそうになった。
連絡もせずにすっぽかしたのは、悪かったと思う。
でも、ゆづに康介の話はしたくなかった。
余計な心配をさせてしまうから。
「……Aちゃん? 電話、出ないの?」
「あ、うん」
頭も体も疲弊している今、うまく誤魔化せる自信がなかった私は、そっとスマホをトートバックに戻した。
今晩言い訳を考えて、明日ちゃんと説明しよう。
ゆづだってショーの後で疲れているだろうし。そう楽観視していた私は、本当に甘かったと思う。
駅で将悟くんと合流した後、二人から夜ご飯に誘われたけど、食欲がないからと辞退して、マンションに帰って来た。
普段あんまり歩かないから、足が棒のようだ。
ふくらはぎが強張っているし、お風呂でマッサージしなきゃ。
すぐに湯船にお湯を貯めて……と、帰った後の段取りをしているうちに、最上階に着く。
「―――あ……」
ジャージ姿のゆづが、ドアにもたれて立っていた。
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エミル(プロフ) - ころねさん» キュンキュンしてもらえて、嬉しいです♡ すっかり可愛い羽生さんになってしまいましたが、しばらくこの状態が続きます(笑) (2022年11月28日 22時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
ころね(プロフ) - うわ〜キュンキュンします♡赤面する羽生さん、かわいすぎる(^^)でももどかしい! (2022年11月28日 22時) (レス) @page37 id: 800fd7d527 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 璃子さん» 二人の距離が縮まればいいなーと思いつつ、書いていますが……まだしばらく友達の予定(笑) (2022年11月18日 22時) (レス) @page27 id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
璃子(プロフ) - わぁぁ…ここで待て!ですか!!どうなっちゃうの?気になる〜〜 (2022年11月17日 22時) (レス) @page27 id: 9bf38dcb2c (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 璃子さん» 璃子さん、ありがとうございます。ライビュは大きな画面で羽生さんを観ることができるのがいいですよね。ドアップになるたび、変な声が出そうになるけど(^_^;) 可愛い羽生さんは、書いていて楽しいです。しばらく恋に翻弄されてもらう予定(笑) (2022年11月1日 22時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:エミル | 作成日時:2022年10月25日 21時