友達の定義ー３ ページ8
「あの、そのことなんですけど……」
すごく言いづらい雰囲気になっていることを認識しつつ、このタイミングを逃すわけにはいかないと、羽生さんの前に立つ。
「私、羽生さんの友達にはなれません」
「……、………」
羽生さんは私をちらっと見ると、手にしていたスケート靴をキャリーケースにしまい、バタンと閉じた。
「―――理由は？」
「偶然、お隣同士になっただけで、私と羽生さんでは住んでいる世界も価値観も全然違うと思います。それに前にもお話しましたが、友達はお互いに対等じゃないと関係を続けるのが難しい。それが理由です」
私の言葉をうなずきながら聞いていた羽生さんは、視線を宙にやって少し考えた後、口を開く。
「香椎さん、自分で考えた友達の定義に縛られすぎてない？」
「……、………」
「俺は出会ってからずっと香椎さんと上下なく接しているつもり」
「それは、わかっています」
羽生さんは、誰かを見下したりする人じゃない。
「でも、羽生さんは、私にとって雲の上の人だから。遠い存在なんです」
「俺は、ここにいるのに？」
「物理的な距離を言っているんじゃないです」
羽生さんだって、私の話を理解しているはず。
「羽生さんと友達になるなんて、畏れ多くて……。私には無理です」
―――私は、なにを怖がっているんだろう……？
羽生さんに答えながら、浮かんできた疑問。
頑なに友達になろうとしないのは、怖いから。
だけど、なぜ？
自分でも説明つかない感情を持て余してしまう。そんな感情になること自体が怖いのかもしれない。
「……香椎さんはさ、」
ため息まじりに吐き出された低い声。
「価値観が違う人は受け入れられないの？ 畏れ多いとか、対等じゃないとダメとかいろいろ言い訳しているけど、友達を選別しているのはそっちじゃん」
「………………」
羽生さんの透き通った瞳がまっすぐ見つめてきて……後ろめたさに、私はうつむいた。
「いいよ、わかった」
両膝をパンと叩くと、羽生さんは立ち上がる。
「じゃあ、これまでどおり、ただのお隣同士ってことで」
そして、私に背を向けて、帰るために片づけを始めた。
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エミル(プロフ) - 鹿さん» いつも楽しみにしてくださり、ありがとうございます！私もこの先どう恋愛にもっていこうか、思案中です(笑)恋愛に目覚めた羽生さんがどうなるか考えるのも楽しみ。 (2022年9月19日 10時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 冷めてますね〜＾＾こんな羽生さんがどうやって人を好きになるのかすっごく楽しみです！どんな痛い目にあうんだろ…ドキドキ！ (2022年9月19日 7時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - ころねさん» きっと、お料理している姿もめちゃカッコいいはず！半分こしたいという妄想(笑) (2022年9月16日 22時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
ころね(プロフ) - 羽生くんが作ったオムライス…なんて素敵なパワーワード！ (2022年9月15日 23時) (レス) @page29 id: 800fd7d527 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 璃子さん» 璃子さん、そう痛い目にあう羽生さんを書きたい！楽しみにしていてください（←自分でハードル上げる･･･汗） (2022年9月14日 21時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミル | 作成日時：2022年8月23日 20時
