ケーキとワインー８ ページ35
＜Yuzuru Side＞
「私のなにがいけなかったのかな……？」
スンと、鼻をすする。
「勉強も仕事も頑張って、真面目に生きてきたのに」
「うん、わかるよ。どうにもならない不条理なことってあるから」
ティッシュを数枚取って、Aに渡す。
「別れてすぐの頃ね、ゆづの演技をYouTubeで観たの」
「えっ」
「北京のフリー」
「……、………」
「すごく、心に響いて……。前を向いて頑張ろうって思えた。ゆづのスケートに対する努力とくらべたら、私の失恋なんて些細なことだけど」
涙をティッシュで拭うと、Aはぎこちなく笑う。
―――ああ、そうか。
あの夜、Aが“天と地と”をリクエストしてくれた理由。
どうしよ、めちゃくちゃ嬉しいかも。
「悩んで苦しんで、前を向こうとしている。それが些細なことなわけないだろ」
「……うん」
「俺のスケートがAの力に少しでもなれたなら、よかった」
心からそう思う。
「……私……」
「うん？」
「恋愛はダメだったけど、その代わりに神様がゆづと出会わせてくれたのかな……」
二重の瞳が眠たげに瞬きをして、俺を見上げる。
Aの瞳の色、黒色じゃないんだな。
光が当たるとグリーンが混じってる。
「ゆづと友達になれて、よかった」
「A」
「話、聞いてくれて……ありがと」
そのまま、力が抜けていくようにテーブルに突っ伏してしまった。
「……A？」
あちゃー、寝てしまったか。
結局、何杯ワイン飲んだんだろ。
ボトルを照明に透かすと、確実に半分以下に減っていた。
Aの寝顔を見るのは三度目だ。
伏せられた睫毛が涙に濡れて光っている。
本気で誰かに恋をしたことがない俺は、失恋で泣く気持ちが想像できない。
ただ、莉緒に泣かれたときと違って、Aの涙には嫌悪感を抱かなかった。
むしろ慰めてやりたいと思った。
元彼のこと、泣くほど好きだったんだ……。結婚も考えていたって言っていたし、本気だったんだよな。
どんな奴だったっけ？
何度か挨拶はしたよな。それなりに見映えはいい男だった。
いつだったか、仲良さそうに二人でマンションから出てきたところに遭遇したことを思い出して……わけもなく、不快な感覚に襲われた。
……、……やめよ。
Aが一生懸命忘れようとしているのに。
「まあ、頑張れ」
静かな寝息を立てるAの髪をもう一度そっと撫でた。
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エミル(プロフ) - 鹿さん» いつも楽しみにしてくださり、ありがとうございます！私もこの先どう恋愛にもっていこうか、思案中です(笑)恋愛に目覚めた羽生さんがどうなるか考えるのも楽しみ。 (2022年9月19日 10時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 冷めてますね〜＾＾こんな羽生さんがどうやって人を好きになるのかすっごく楽しみです！どんな痛い目にあうんだろ…ドキドキ！ (2022年9月19日 7時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - ころねさん» きっと、お料理している姿もめちゃカッコいいはず！半分こしたいという妄想(笑) (2022年9月16日 22時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
ころね(プロフ) - 羽生くんが作ったオムライス…なんて素敵なパワーワード！ (2022年9月15日 23時) (レス) @page29 id: 800fd7d527 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 璃子さん» 璃子さん、そう痛い目にあう羽生さんを書きたい！楽しみにしていてください（←自分でハードル上げる･･･汗） (2022年9月14日 21時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミル | 作成日時：2022年8月23日 20時
