ケーキとワインー２ ページ29
約束の時間ぴったりに、チャイムを鳴らす。
「はーい。開いているから、どうぞー」
インターホンから聞こえてきた声に、私はドアを開けて「おじゃましまーす」と用意されていた来客用のスリッパに履き替えると、まっすぐリビングへ向かった。
「お誕生日、おめでとう」
リビングに入った途端、ゆづに笑顔で迎えられる。
「ありがとう」
顔色いいな。体調回復したんだ、よかった。
そして、今日もとびきり爽やかだ。
ホワイトとネイビーのボーダーニットと、クロップドパンツが夏っぽい。ありがちなコーデだけど、ここまで清涼感出せる人、他にいないよね。
私は、ゆづに勧められるまま、ソファに座る。
「お腹、空いてる？」
「うん」
「じゃあ、作るから。適当にテレビでも観てて」
―――え？
今、なんて？ 作るって、言った？
びっくりして彼の姿を目で追うと、ゆづはキッチンでごそごそとなにか作業をしている。
「まさか、ゆづが料理してくれるの……？」
「そうだよ。まさかって、なんだよ」
笑いながら顔を上げたゆづは、片手で卵を割り、ボウルに入れると混ぜ始めた。
「……手慣れてる」
思わず立ち上がって、カウンターからゆづの手元を覗き込む。
「まあね、自炊してるから」
この前来たとき、やけに調味料が揃っているなと思ったけど、本人が使っていたとは。
「ちなみになにを作ってくれるの？」
「うん、オムライス。今、ハマってるって言っていたでしょ」
たしかにプリンを食べながら、そんな話をしたような。ちゃんと覚えてくれていたんだ。
「ゆづって……」
「うん？」
「彼女にもこうやって好きな料理を作ってあげるの？」
ごく自然に相手を喜ばせることができる。
ゆづは相当な人たらしだわ。
康介なんて自分の好きなものしか作らなかったよ？
「は？ ねーよ。そもそも料理始めたのも最近だし、家族以外には食べさせたことない」
「……ってことは、ゆづの手料理を食べるのは」
「Aが初めて」
うっそー。ゆづは事も無げに言うけど、ゆづが初めて手料理を振舞う相手が私とか……。
「どうしよ、そんな大役……」
「なにが大役だよ。気楽に食え」
いや、無理でしょ。
「あ、そういえば、ちょっと聞くんだけどさ……」
みじん切りにした玉ねぎと鶏肉を炒めながら、ゆづが私を見る。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 164人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
エミル(プロフ) - 鹿さん» いつも楽しみにしてくださり、ありがとうございます！私もこの先どう恋愛にもっていこうか、思案中です(笑)恋愛に目覚めた羽生さんがどうなるか考えるのも楽しみ。 (2022年9月19日 10時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 冷めてますね〜＾＾こんな羽生さんがどうやって人を好きになるのかすっごく楽しみです！どんな痛い目にあうんだろ…ドキドキ！ (2022年9月19日 7時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - ころねさん» きっと、お料理している姿もめちゃカッコいいはず！半分こしたいという妄想(笑) (2022年9月16日 22時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
ころね(プロフ) - 羽生くんが作ったオムライス…なんて素敵なパワーワード！ (2022年9月15日 23時) (レス) @page29 id: 800fd7d527 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 璃子さん» 璃子さん、そう痛い目にあう羽生さんを書きたい！楽しみにしていてください（←自分でハードル上げる･･･汗） (2022年9月14日 21時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：エミル | 作成日時：2022年8月23日 20時
