甘い痛み−２ ページ20
自然とバックハグみたいな姿勢になって、密着した胸板に結弦くんが男性であることを嫌でも感じてしまう。
首筋にかかる息がくすぐったい。
心臓が壊れそうなぐらい、ドキドキしている。
夕暮れで窓の外がオレンジ色に染まる頃には、外のアスファルトもすっかり乾いていた。
カーテンを閉めてから、夕飯の準備をする。
出来上がったシチューからは食欲を誘う香りがして、柔らかく煮込まれたチキンがいい感じ。
「緊張してるわりに、食欲はあるんだ」
テーブルで向かい合って食べていると、結弦くんがおかしそうに笑う。
朝もお昼もほとんど食べていなかったせいで、ここにきてお腹が空いてしまった自分。
半分以上空になったお皿を見下ろす。
「……ごちそうさま」
「え？ まだ残ってるじゃん」
「うん」
「ごめん、べつにからかったとかじゃないよ？」
「それは、わかってる」
「じゃあ、なんで食べないの？」
……なんで？
食べたら、お腹がぽっこり出ちゃうからだよ。
余分なものがまったくない、究極に美スタイルの結弦くんには到底理解できないだろうけど。
男性とは思えないウエストのくびれがある結弦くんの前で、ぽっこりだけは避けたい。
「女心」
「……………」
短く答えた私に、結弦くんはそれ以上突っ込んではこなかった。
二人一緒にキッチンで洗い物をした後、ソファで寛ぐ。
「DVDでも観る？」
「うん」
「好きなの選んでいいよ」
テレビボードの扉を開けると、DVDがずらりと並んでいた。
選んでいいよって……。
全部、フィギュアスケートですが？
「どれ、観たい？」
「……うーんと、これ」
結弦くんの字で試合の日付と名前が書かれたDVDから選んだのは、2012年の世界選手権。
「古いやつもってきたね」
「高校生の結弦くんに会いたくなったの」
DVDプレーヤーにセットして、再生ボタンを押すと―――王子様のような衣装を着た結弦くんが映し出される。
今より華奢で儚げで、それでいて十代らしい粗削りな部分もあって。
何度観ても、心が揺さぶられる。
「ねー、この演技のさ、どこが好き？」
食い入るように観ている私の横から結弦くんが聞いてくる。
黙っていて欲しいなーと思いつつ、
「中盤で転倒するところ」
即答すると、「え、そこ！？」と、結弦くんは眉間に皺を寄せた。
倒れて立ち上がった後、私の知らない結弦くんに豹変する。
あの瞬間が、好き。
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エミル(プロフ) - 鹿さん» アレは……好き勝手書いておきながらですが、恥ずかしくて読み返せません(笑)とりあえず、羽生さんに土下座します。鹿さんの作品も大好きなので、ずっと書いて欲しいです！ (2022年4月30日 20時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - アレなシーンお疲れさまです！もう、悶えました（笑）リアルすぎて！もう、もう、人様の作品は読んでて楽しいです＾＾永遠に書いててほしいです！ (2022年4月30日 10時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - ころねさん» ラブラブ、喜んでもらえてよかったです(^^♪ 私もこの場面を書くのに久々にニースロミオを鑑賞しました♡ (2022年4月22日 22時) (レス) @page20 id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
ころね(プロフ) - ラブラブ楽しいです！癒やされます。永遠に続いて欲しいくらいです(♡‿♡)そしてニースロミオを見たくなりました！ (2022年4月21日 23時) (レス) id: 800fd7d527 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 璃子さん» 勢いで書いてしまいました(笑)しばらくはラブラブです♡ (2022年4月20日 21時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミル | 作成日時：2022年3月26日 21時
