幸せを願う−３ ページ39
カフェの窓から差し込む昼間の太陽が、グラスの氷をキラキラと反射させている。
待ちゆく人たちが纏う淡い色合いに春を感じて、自分が今日着てきた黒のニットが季節外れに思えた。
せめて、白のデニムにすればよかったかなぁ……。
グラスのストローを指先で摘まんだまま、ぼんやりと外を眺めていたら―――スッと手元に影が落ちる。
顔を上げた先には、普段と変わらない笑みを浮かべた蒼が立っていた。
「……ごめん、遅くなった」
「え、あ、うん」
蒼は、自然な口調と動作でストンと前の席に座る。まるで、私たちの間に何事もなかったかのように。
「引っ越し、終わったの？」
注文を取りに来た店員がテーブルから離れるのを待って、私は蒼に聞く。
「うん、まだ散らかっているけどね」
「そう」
「なかなか時間取れなくて、ごめん」
「ううん」
心配をかけた謝罪と忘れ物を届けてくれたお礼、そして話がしたいから会いたい―――そう送ったメッセージに、蒼からはしばらく待って欲しいと返信があって。待っている間に4月になっていた。
「着任したばかりだから忙しいよね」
「それもあるけど、少し時間が必要だと思ったから……。お互いにね」
運ばれてきたコーヒーを一口飲むと、蒼は窓の外に視線を移した。
「今日は実家に用事があって仙台に戻ってくることになっていたから、ちょうどよかった」
瞳を伏せて、口元だけで笑う。
穏やかな表情には、私を責める雰囲気なんて一つもなくて……こんなに優しい人を傷つけてしまったことに、苦い思いが胸に広がる。
「新しい部署、どう？」
本題には進まずに違う話題を振ったのは、これ以上蒼を傷つけることへの後ろめたさから。
先延ばしにしたって、意味がないのに。
「企画や施策を考える部署だから、現場とは違った緊張感があるかな。そのぶん、若手が多くて活気あるけど」
「そっか、やりがいがありそうだね」
「まあね。Aは最近どう？」
「相変わらずだよ。春休みが終わって、落ち着いたかなって感じ。司書は滅多に入れ替わりないから、メンバーは変わりないし」
私が笑うと、蒼も微笑んだ。
他人から見れば、私たちは仲のいいカップルに見えるのかな。
内心では、綱渡りみたいにお互いの心を探り合っている。触れてはいけない部分を避けるように……。
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エミル(プロフ) - 澪さん、いつも好きコメントくださり、嬉しいです(*´ω｀*) 色気のある羽生さんを想像しながら書く自分はちょっと……ですが、引き続き萌えてもらえるよう頑張りますね。 (2022年3月25日 22時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - Isolaさん» Isolaさん、コメントありがとうございます。蒼目線のお話、需要あるのかなーと不安だったので、褒めてもらえて嬉しい〜♡ ラブラブな二人、ご期待に沿えるよう頑張ります！これからもよろしかったら、お付き合いくださいませ。 (2022年3月25日 22時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - すきぃぃぃい！エミルさんが書く羽生さん色気ダダ漏れでめっちゃ好きです！ (2022年3月24日 23時) (レス) @page50 id: 8e648ea481 (このIDを非表示/違反報告)
Isola(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます！蒼さん目線での話の進行とても良かったです。羽生さんはもちろん主人公や蒼さんのキャラクターがよりクリアになって素晴らしかったです！早くラブラブな二人が読みたいっっ笑 (2022年3月24日 23時) (レス) @page50 id: 397f4569c5 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - さくらこ29504号さん» さくらこ29504号さん、コメントありがとうございます！羽生さんの色気は表現できないぐらいですけど、少しでも感じてもらえたら嬉しいです(*´▽｀*)更新、頑張ります！ (2022年3月24日 21時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミル | 作成日時：2022年2月17日 21時
