不鮮明な夜に−６ ページ25
「ベッドは結弦くんのだから、私がソファで寝るね」
せめてこれぐらい抵抗させて欲しい。
「それは、ダメ」
「でも、」
「シーツはちゃんと替えてるから、清潔だよ」
「そういうことじゃなくて」
「俺の性格知ってるでしょ。ここでAが反抗したからって、俺が意志を曲げると思う？」
「……、……思わない」
「じゃあ、決まりね」
結弦くんは可愛らしくにこっと笑うと、
「いい子、いい子」
私の頭に手を置いて、わしゃわしゃと撫でる。
「ちょっと、髪がぐちゃぐちゃになる！」
「ふふふ」
なんか上手く言いくるめられた……。
「寝室、こっち。おいで」
「あ、うん」
結弦くんについて行こうと体の向きを変えようとした瞬間、足に力が入らず、よろけて―――
「危ねっ！」
咄嗟に私を支えようとした結弦くんに掴まる形で、二人とも床に倒れ込んでしまう。
ほんの一瞬の、出来事。
床に肘をついて私の体を支える結弦くんの瞳がすぐ間近にあって、同じシャンプーの香りに心臓が痛いほど暴れる。
布越しに伝わってくる体温と、息遣い。
まっすぐな睫毛の奥にある、深く澄み切った黒曜石のような瞳に、結弦くんへの想いが溢れて零れていく。
私は、どうして、こんなにこの人に惹きつけられるんだろう。
十年前、突然目の前に現れて、風のように私の心をさらっていった。
あの日から、私の心は結弦くんに囚われたまま。
―――――――好き……。
良心も、罪悪感も、どうだっていい。
明日、破滅したっていいと、思った。
結弦くんの首に腕をまわして引き寄せると……結弦くんの瞳が見開かれた。
理性なんかこの人の前で意味を持たない。
私は、自分を止められなかった。
空気が揺れて、結弦くんはスッと目を細める。
そして、
「……、………」
鼻先が触れ合う距離で―――自分の唇の前に、人差し指を立ると……小さく、首を左右に振った。
感情に身を委ねて流されようとしている私を制するように。
「……ご、ごめんね。どこか痛めてない？」
私は結弦くんの体からどけると、愛想笑いを浮かべた。
「ん、平気。Aこそ、大丈夫？」
「うん、私も平気」
自己嫌悪で泣きそうになるのを誤魔化して、へらりと笑う。
結弦くんは、私がなにをしようとしているか気づいて、口にせずに態度でストップをかけた。
それは、私が恥をかかないための結弦くんの優しさ。
でも、その優しさが痛い。
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エミル(プロフ) - 澪さん、いつも好きコメントくださり、嬉しいです(*´ω｀*) 色気のある羽生さんを想像しながら書く自分はちょっと……ですが、引き続き萌えてもらえるよう頑張りますね。 (2022年3月25日 22時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - Isolaさん» Isolaさん、コメントありがとうございます。蒼目線のお話、需要あるのかなーと不安だったので、褒めてもらえて嬉しい〜♡ ラブラブな二人、ご期待に沿えるよう頑張ります！これからもよろしかったら、お付き合いくださいませ。 (2022年3月25日 22時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - すきぃぃぃい！エミルさんが書く羽生さん色気ダダ漏れでめっちゃ好きです！ (2022年3月24日 23時) (レス) @page50 id: 8e648ea481 (このIDを非表示/違反報告)
Isola(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます！蒼さん目線での話の進行とても良かったです。羽生さんはもちろん主人公や蒼さんのキャラクターがよりクリアになって素晴らしかったです！早くラブラブな二人が読みたいっっ笑 (2022年3月24日 23時) (レス) @page50 id: 397f4569c5 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - さくらこ29504号さん» さくらこ29504号さん、コメントありがとうございます！羽生さんの色気は表現できないぐらいですけど、少しでも感じてもらえたら嬉しいです(*´▽｀*)更新、頑張ります！ (2022年3月24日 21時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミル | 作成日時：2022年2月17日 21時
