不鮮明な夜に−３ ページ22
＜Yuzuru Side＞
言葉を交わさないまま、Aを自分の部屋に連れて来た俺は、遠慮して後ずさる彼女をバスルームに放り込むと、ドアを閉めた。
「―――はあ……」
Aになにがあったのか心配する気持ちよりも、自分の手元にAがいるという事実に浮き立っている心。
冷静にならなきゃ……。
Aが落ち着いたら、話をしよう。
しばらくして聞こえてきたシャワーの音に安堵の息をつき、寝室に向かうとAの着替えを用意した。
「……結弦くん……」
リビングスペースでぼんやりしていた俺は、頼りなげに自分を呼ぶ声に顔を上げて―――呼吸を止める。
濡れた髪と幼さの残る素顔。
サイズの合わないトレーナーとハーフパンツから覗く華奢な手足、ふわっと香るのは自分と同じシャンプーの匂い。
……これは、危険すぎる。
「座って、休んでて」
Aをソファに座らせて、入れ違いに立った俺はキッチンへ向かう。
なんなんだ、このミイラ取りがミイラになった気分は。
好きな子が自分の服を着るだけで、こんなに攻撃力を持つとは思いもよらなかった。
「……はい、これ飲んで」
ホットミルクの入ったマグカップをAの前のテーブルに置く。
「ありがとう」
「………………っ」
マグカップを手に取ろうとかがんだA。襟ぐりが少し開いて……そこにあるものが否応なしに目についてしまった。
「……結弦くん？」
「あ、いや。俺もシャワー浴びてくるわ」
直立不動で立っている俺を見上げたAから顔をそむけた。
足早にバスルームに駆け込んだ俺は、ドアを背にズルズルと蹲る。
……参った。
襟元から覗く白い肌に残された、鬱血の痕。
全身の血が沸騰したように熱く滾って、焦げつきそうに狂おしい嫉妬が込み上げてくる。
深呼吸をしても荒ぶる気持ちが収まらない。
鮮やかな紅色は、真新しいもの。
さっきまで、あいつと一緒だったのか。
あの男にいいように抱かれた後に、よく俺に連絡してこれるよな。
ギリギリと噛みしめた奥歯が鳴る。
シャワールームに入ると、冷たいシャワーを勢いよく頭から浴びた。
じわりと涙が目に滲んで、俺は手の甲で乱暴に拭う。
すげー悔しいけど。
終わってしまった恋でも、Aを愛する気持ちはまだ生きている。
弱っているAを責めたくない。
そんな卑怯な俺は嫌だ。
―――だったら、俺はどうする？
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エミル(プロフ) - 澪さん、いつも好きコメントくださり、嬉しいです(*´ω｀*) 色気のある羽生さんを想像しながら書く自分はちょっと……ですが、引き続き萌えてもらえるよう頑張りますね。 (2022年3月25日 22時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - Isolaさん» Isolaさん、コメントありがとうございます。蒼目線のお話、需要あるのかなーと不安だったので、褒めてもらえて嬉しい〜♡ ラブラブな二人、ご期待に沿えるよう頑張ります！これからもよろしかったら、お付き合いくださいませ。 (2022年3月25日 22時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - すきぃぃぃい！エミルさんが書く羽生さん色気ダダ漏れでめっちゃ好きです！ (2022年3月24日 23時) (レス) @page50 id: 8e648ea481 (このIDを非表示/違反報告)
Isola(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます！蒼さん目線での話の進行とても良かったです。羽生さんはもちろん主人公や蒼さんのキャラクターがよりクリアになって素晴らしかったです！早くラブラブな二人が読みたいっっ笑 (2022年3月24日 23時) (レス) @page50 id: 397f4569c5 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - さくらこ29504号さん» さくらこ29504号さん、コメントありがとうございます！羽生さんの色気は表現できないぐらいですけど、少しでも感じてもらえたら嬉しいです(*´▽｀*)更新、頑張ります！ (2022年3月24日 21時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミル | 作成日時：2022年2月17日 21時
