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「あ、わかんないかな？」
不審者かと後ずさろうとした私に、結弦はマスクを指で下ろしてにこっと笑った。
羽生結弦がコンビニに現れたことも、声をかけてきたことも、私の名前を彼が知ってくれていたことも、非現実的で……。私の脳の機能は停止した。
なにより、至近距離で見る王子様スマイルの破壊力の凄まじさよ。
「藍川さんって仙台の人だったんだ？」
「……あ、いえ……。大学がこっちで、出身は広島です」
「へぇ、ずいぶん遠くの大学を選んだんだね」
「昔から伊達政宗が好きで……。あと牛タンも」
問われるままに、個人情報も嗜好も話してしまった。
「ふはっ、おもしろい理由」
笑うと目尻に皺ができて、口角がキュッと上がる。カッコいいより、可愛い王子様。
「でも、髪が黒くなっていたから、最初は藍川さんだとわかんなかった」
そう言って、王子様は自分の頭を指さす。
「今、就職活動をしているので」
トロントにいた頃は明るい栗色にしていたのを黒髪に戻した。
「ということは、大学４年生？ 俺と同い年だ」
「はい」
「ところで、こんな夜中に一人で大丈夫？」
王子様がちらっと私が手にしているアイスに視線を落とすから、私は恥ずかしくなった。
「この上に住んでいるので、大丈夫です」
「それなら、よかった」
小首を傾げて、ふわっと微笑む。
同級生の男子が同じポーズをしたら、あざといか気色悪いかのどちらかなのに、王子様がやると尊さすら感じるから不思議だ。
そして、私がその笑顔に心を奪われているうちに、
「就職活動、うまくいくといいね。あと、藍川さんは黒髪のほうが似合ってると思う」
と、王子様は甘い香りと言葉だけ残して、コンビニから颯爽と出て行った。
どうして、結弦があのコンビニにいたのか。
彼が地元で使っているリンクがマンションのわりと近くにあって、帰国時は夜中にそこで練習をしていると知ったのは、ずいぶん後になってからだった。
王子様に出会う幸運なんて、そう転がっているものじゃない。
あのコンビニの夜、その運を使い果たしたと思ったのに。案外早く結弦と再会する機会が巡ってきた。
就職が決まり、卒論も提出して、暇を持て余していた私は、バイトで貯めたお金でトロントのホストファミリーのところへ向かった。
２週間の滞在でたっぷりバケーションを満喫した後、無事に帰国の途に着くはずだった。
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エミル(プロフ) - くっきーさん» 短編、楽しみにしてもらえて嬉しいです！GIFT、想像をはるかに超えたショーでした。ハマりすぎて更新が滞っていますが、しばしお待ちくださいね。 (2023年3月2日 21時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
くっきー(プロフ) - やっぱりエミルさんの短編すごく素敵です！泣GIFT大成功でしたね！！これからの展開楽しみです、、 (2023年3月2日 1時) (レス) id: 95130b7885 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 璃子さん» 似通った話になりがちなので、新鮮と言ってもらえて嬉しいです(*´ω｀*)ファン目線だと羽生さんのそばにいられるだけで幸せ。でも、実際に彼女になる方は大変だし我慢することも多いんだろうなって想像します。本当に幸せになって欲しいと私も思います。 (2022年4月10日 21時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
璃子(プロフ) - なんだか新鮮なお話でした。楽しく読ませて頂きました。実際お付き合いするとなったら…やはり今回の羽生さんのようにお相手を気遣って「俺といて楽しい？」とか気にしそうですよね。何にせよ幸せになって頂きたい方です。 (2022年4月10日 9時) (レス) @page23 id: a68a41f56a (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 鹿さん» 鹿さん、ほっこりしていただき、ありがとうございます(*^-^*)長編がアレなので、素直な二人にしました。幸せな羽生さん、増やしたい！会見は、羽生さんらしい世界観でした。 (2022年2月14日 21時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミル | 作成日時：2022年2月12日 22時
