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「もー、わかんねー奴だよな」
結弦さんは膝立ちで私のそばにくると、ぐいっと私の腕を引き寄せた。
「本当はね、可愛いと思ってる」
耳元で囁かれた低く柔らかな声。
「好きな子なんだから、当たり前でしょ」
私を見つめる綺麗な黒い瞳も、その形のいい唇から紡がれる言葉も、まっすぐだ。
「まだ、俺と別れたい?」
こてんと首を傾げた結弦さんは、口角を上げる。
「……別れたくないです」
あー、やっぱり、最後は降参してしまう。
結弦さんには勝てない。
「好き、大好き」
ぎゅっと抱きつくと、逞しい胸に閉じ込められる。
「じゃあ、キスして?」
「え……」
「俺のこと、泣かしたんだからさー。償ってよ」
「でも、私の方が……」
泣かされたと思うんだけど……。
桜色の唇に人差し指を当てて、「ん」と顎を上げた結弦さんの薄く開けた目があまりに色っぽいから、吸い込まれるように唇を重ねた。
「もっと、ちょうだい」
いつの間にか服の裾から入り込んだ結弦さんの手のひらが、するりと肌を撫でた。
「……ん……っ」
耳たぶを甘噛みされ、抵抗しようとした声がくぐもる。
「キスだけじゃ、償い足りないよね……?」
ふふっと笑んだ結弦さんは妖艶で……私は、抗うのは無駄だと悟った。
背後からぴったりと合わさったなめらかな肌。
伝わってくる鼓動が少しずつ、落ち着きを戻していく。
結弦さんは、いつになく何度も求めてきた。それでいて、とびきり甘くて優しかった。
「これからも喧嘩すると思うけど、別れるとかなしね?」
頬を寄せて念押ししてくる結弦さんが可愛くて、
「泣いちゃうから?」
つい、からかってしまう。
「……へー、調子に乗るね。もう一回啼かそうか?」
あっという間にごろんと仰向けにされた私の上に、結弦さんの艶っぽい瞳。
その綺麗すぎる表情に固まった私をくすっと笑った結弦さんは、額と額をくっつけてくる。
「マジで、素直じゃない」
「……ごめん」
「いいよ。美百合となら、喧嘩も悪くないと思える」
額にちゅっとキスをしてくれる結弦さんは、優しく微笑む。
「だから、ずっと俺を好きでいて?」
たぶん、この先も不安になるし、そのせいで意地を張ってしまうだろうけど。
そのたびにお互いの大切さに気づいて、結びつきが強くなる。
結弦さんとなら。
「ずっと、大好き」
(完)
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エミル(プロフ) - くっきーさん» 短編、楽しみにしてもらえて嬉しいです!GIFT、想像をはるかに超えたショーでした。ハマりすぎて更新が滞っていますが、しばしお待ちくださいね。 (2023年3月2日 21時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
くっきー(プロフ) - やっぱりエミルさんの短編すごく素敵です!泣GIFT大成功でしたね!!これからの展開楽しみです、、 (2023年3月2日 1時) (レス) id: 95130b7885 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 璃子さん» 似通った話になりがちなので、新鮮と言ってもらえて嬉しいです(*´ω`*)ファン目線だと羽生さんのそばにいられるだけで幸せ。でも、実際に彼女になる方は大変だし我慢することも多いんだろうなって想像します。本当に幸せになって欲しいと私も思います。 (2022年4月10日 21時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
璃子(プロフ) - なんだか新鮮なお話でした。楽しく読ませて頂きました。実際お付き合いするとなったら…やはり今回の羽生さんのようにお相手を気遣って「俺といて楽しい?」とか気にしそうですよね。何にせよ幸せになって頂きたい方です。 (2022年4月10日 9時) (レス) @page23 id: a68a41f56a (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 鹿さん» 鹿さん、ほっこりしていただき、ありがとうございます(*^-^*)長編がアレなので、素直な二人にしました。幸せな羽生さん、増やしたい!会見は、羽生さんらしい世界観でした。 (2022年2月14日 21時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:エミル | 作成日時:2022年2月12日 22時