目覚めた先も、夢２

＊ ページ17

「ちょっと、体調が悪くて……」

「そっか。だったら、無理して来なくてよかったのに」

嘘をついた私に対する、結弦さんの返答はすごく素っ気ないもので、

「迷惑だったよね。ごめん」

私は服を整えながら、唇を噛んだ。


「べつに迷惑とは言ってない」

「そう聞こえたんだもん」

「勝手に悪く変換するなよ。体調悪いって言うから気遣っただけだろ」

「だよね、ありがとう」

自分の口調が刺々しくなるのを止められない。


「……最近思っていたけど……やけに突っかかってくるよね？ なにが気に入らないわけ？」

私を見据える結弦さんの切れ長の瞳が険しくなった。

結弦さんに非はないし、気に入らないところなんてない。

嫌われたくないから、強がってしまう。素直になれない。
小心者が虚勢を張るのと同じ。

つまるところ、私は自分に自信がないだけなんだ。


「しょうがないでしょ。こういう性格なの」

不安をぶちまけたら、結弦さんは受け止めてくれるかもしれない。

でも、やっぱり自信のない私は心にもないことを言う。


「……可愛げがねー」

ため息とともに吐き出された結弦さんの言葉は、容赦なく私の心を突き刺した。

「だったら、可愛げのある子を部屋に呼んだら？」

言ってしまってから、マズイと思った。

慌てて口元に手をやるけど、遅い。
結弦さんの顔が能面のように表情を失う。


「それ、どういう意味？ 本気で言ってるの？」

腕を組んで私を見下ろしてくる瞳は冷たくて。怒りが滲んでいるのが伝わってくる。

結弦さんの導火線が短いほうだということは、付き合ってから知った。
怒らせると、怖い。

だけど、心から謝れば、それをはね除ける人じゃない。

今のは、私が悪い。
謝らなきゃ。


「無理して可愛げのない私と付き合う必要ない、そう思っただけ」

結局、私は意地を張ってしまった。

「どうせ喧嘩ばっかりで、結弦さんだってうんざりしてるくせに」

「……Aはうんざりしてるんだ？」


「私は―――」

喧嘩したっていい。そばにいられるなら。


「今日はもう部屋へ戻りな。建設的な話ができそうにない」

冷静な判断。
きっと、この人は私が別れようと言っても、感情一つ揺らさない。

「……わかった」



本当はね、私だって、素直に甘えられる可愛げのある女の子でいたかった。


　
　
　

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